民法(債権法)改正の解説13 [民法102条] 制限行為能力者が代理人になった場合

制限行為能力者が代理人になった場合に関する民法102条が、以下の規定に改正されています。

制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。


民法102条本文とただし書きについて、それぞれ異なる目的で変更されています。

民法102条本文について

以前の民法102条は、「代理人は、行為能力者であることを要しない。」という本文だけのシンプルな規定でした。
この規定では、成年被後見人のような制限行為能力者が代理人になれることは明確ですが、その制限行為能力者が代理人として行った行為を取り消すことができるのかについては、必ずしも明確ではありませんでした。
そこで、分かりやすい民法にするという目的のため、上記の改正後の民法102条本文のように、制限行為能力者が代理人として行った行為は取り消すことができないことをはっきりさせることになりました。
ただ、改正前の段階でも、制限行為能力者が代理人としてした行為を取り消すことができないというのが民法102条の解釈として一般にとられていました。
ですから、改正は、形式的なものであり、実際上の運用に変更があるわけではありません。

民法102条ただし書きについて

また、民法102条では、成年被後見人や未成年者のような制限行為能力者でも代理人として有効な法律行為をすることができて取り消せないことの理由として、①制限行為能力者の行為を取り消すことができるのは制限行為能力者を保護するためであり、代理人としての行為は制限行為能力者に効果が帰属しないので、制限行為能力者保護の観点からは問題ないこと、②制限行為能力者をあえて代理人に選任した本人を保護する必要性は乏しいことが挙げられていました。

この説明からすると、特に②について、本人が自ら制限行為能力者を代理人(任意代理人)にした場合は妥当しますが、本人の意思とは関わりなく代理人に選任されてしまう法定代理人(成年後見人、保佐人、補助人、未成年後見人、親権者など)の場合は、あてはまりません。
この点、平成11年以前は、成年被後見人(当時の禁治産者)、被保佐人(当時の準禁治産者)、未成年者は、成年後見人・保佐人になることができない(欠格事由)とする旨の規定がありました。
ところが、平成11年の民法一部改正により、成年被後見人・被保佐人・被補助人であっても、成年後見人・保佐人になることは一応可能になりました。
そこで、やはり制限行為能力者が法定代理人の場合、取り消すことができることにする改正がされたのです。

関連して、民法13条1項10号の改正がされています。
既にこちらで詳しく説明していますが、被保佐人が制限行為能力者の法定代理人として行為をする場合には、保佐人の同意を得ることが必要であり、同意を得ていない場合は取り消すことができることになっています。

民法102条ただし書きが適用されない場合

また、民法111条1項2号において、代理人が後見開始の審判を受けた、つまり成未婚の母.jpg
年被後見人になった場合には、代理権が消滅すると規定されていることから、成年被後見人は代理人になれず、代理人(法定代理人、任意代理人を問わず)が成年被後見人になった場合は、代理権が消滅して、代理人としての行為は無権代理で無効です。
したがって、民法102条は問題になりません。

それから、未成年者に子どもが生まれて親になった場合、その未成年者が結婚していれば、結婚の時点で成人として取り扱われます(民法753条)ので、問題になりません。
結婚せずに未成年者のまま出産して親になった未婚の母の場合、民法833条で、親になった未成年者の親権者、つまり生まれた子の祖父母が親権を行使します。
この場合も、民法102条は適用されません。

経過措置について

施行日の令和2年4月1日より前に制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、改正後の102条は適用されず、改正前の民法が適用されます。
また、施行日より前に代理権の発生原因が生じた場合においても、同様に改正前の民法の適用を受けます。

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