民法(債権法)改正の解説12 代理人の意思表示の瑕疵 民法101条

民法総則の「第三節 代理」において、多くの改正がされています。
代理人とは、本人に代わって、法律行為をし、法律行為を受領する者のことであり、その行為の効果が本人に生じます。
まず、民法101条が改正の対象となっています。

民法101条1項、2項について

改正後の民法101条1項、2項の条文は、以下のとおりです。

1 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。


この民法101条1項、2項は、改正前の民法101条1項で規定されていた内容をきちんと場合代理人.jpg
分けして、整理した形にしたものであり、基本的には改正前の条文を踏襲しているといえます。

改正前の民法101条1項は、「意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無については、代理人にいて決するものとする。」というものでした。
この規定では、有効か、無効か問題となる意思表示をした者が代理人であるか、相手方であるかが峻別されていませんでした。

そして、古い判例で、代理人が詐欺をしたことによる相手方の意思表示の取消しが問題になった事案で、改正前の民法101条1項を適用する旨を判示したものがありました(大審院判決明治39年3月31日)。
これに対し、多くの学説は、相手方が詐欺による意思表示を取り消す状況で、改正前の民法101条1項を適用する必要はなく、民法96条1項を適用すれば良いと主張していました。
今回の民法改正で、この学説の見解が採用されて、民法101条が適用される場面を限定化した上で、民法101条を適用する場面を場合分けし、明確にすることになったのです。

民法101条1項、2項の適用の限定化

このようにして、今回の改正により、代理人が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫による意思表示をした場面については、改正後の民法101条1項が適用し、代理人の相手方が意思の不存在(錯誤)、詐欺、強迫による意思表示をした場面では改正後の民法101条が適用されず、単に95条、96条1項が適用されることが明確になりました。
これにより、前記大審院の判例は変更されたことになります。
ただし、いずれにしても、結論に変わりはなく、あくまで理論的な問題です。

錯誤の峻別

また、改正前は、意思の不存在に錯誤が含まれることになっていましたが、改正後は必ずしも意思の不存在とは言えない動機の錯誤も錯誤として取り扱われることが明記されることになったため、錯誤が別に明記されることになりました。

1項と2項の場合分け

それから、いわゆる善意・悪意や過失の有無が意思表示において問題になる場合には、代理人が有効か無効か問題となる意思表示をした場合も、相手方が有効か無効か問題となる意思表示を代理人にした場合でも、改正後の民法101条1項、2項が適用されることになり、本人ではなく代理人の善意・悪意、過失の有無が問題になることもはっきり規定されることになりました。

そして、代理人がした意思表示の効力が問題になる場合には、1項が適用されることになりました。
相手方が代理人に対してした意思表示の効力が問題になる場合は、2項が適用されることになりました。

代理人の意思表示について、錯誤・詐欺・強迫による意思表示として効力の有無が問題になる場合(代理人が欺されたり、強迫を受けたりした場合)には、民法101条1項が適用されます。

これに対し、上述したとおり、代理人の相手方が意思の不存在(錯誤)、詐欺、強迫による意思表示をした場面(相手方が欺されたり、強迫を受けたりした場合)は、民法101条2項の問題ではないことになりました。

民法101条3項について

次に、改正後の民法101条3項が以下のとおりとなっています。

3 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

この点、改正前の民法101条2項の条文との違いは、改正前に規定されていた要件である代理人が「本人の指図に従って」行為をしたときという言葉が削除された点です。
そもそも、この条文は、簡単に言えば、本人が知っていたにもかかわらず、代理人が知らなかったことについて、本人は代理人が知らなかったことを主張することができず、知っていたことになるというものです。
改正前は、その場合に、代理人が本人の指図に従って行為をしていたことが要件となるように規定されていました。
ですが、やはり古い大審院の判例が、代理人が本人の指図に従っていたことは必要がないと判示し、この判例により運用されていました。
この判例による運用を明確化するため、「本人の指図に従って」という記載を削除したのです。

したがって、形式的な改正であり、実質的な運用に変更はないものです。

経過措置

施行日である令和2年4月1日より前に代理権の発生原因が生じた場合については、改正後の101条は適用されず、改正前の101条の適用を受けます。

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