政教分離

政教分離とは

政教分離とは、国家は宗教に干渉などをすべきではないとする国家の宗教的中立性の原則のことです。

国家と宗教の分離の原則とも言われます。
日本国憲法では、20条1項後段、20条3項、89条前段において、政教分離が規定されています。
国家と宗教との関係は国や時代により異なり、実は、憲法で政教分離原則を宣言する国はそれほど多くありません。
政教分離の主要な形態として、①国教制度を建前とするイギリス型、②国家と宗教を分離させながら、各々が固有の領域では独立であることを認め、政教条約を締結するイタリア・ドイツ型、③国家と宗教を厳格に分離するアメリカ型があります。
日本はアメリカ型といわれています。

政教分離の趣旨

政教分離の趣旨、つまり、政教分離はどのような目的で規定されているかについては、一般に、信教の自由の保障のためといわれます。
より具体的には、国家と特定の宗教が結びつきをもつことにより、その他の宗教への迫害がなされる危険が大きいこと、歴史的にも、戦前・戦時中に、国家神道のもとでキリスト教などへの弾圧がなされたことが言われます。
その他、宗教の堕落の危険の防止や、国家と宗教が結びつくと宗教の絶対的価値観が国民に強要されるおそれがあること等が趣旨として挙げられることがあります。

政教分離の法的性格

 政教分離の法的性格については、以下の2つの学説があります。

制度的保障説
 個人的権利と異なる一定の制度に対して、立法によってもその核心を侵害することができない特別の保護を与え、当該制度それ自体を客観的に保障している「制度的保障」とする説です。
 人権説に対する批判として、ⅰ制度的保障だからといって政教分離の緩和と直接結びつかない、ⅱ条文の文言上、人権として規定されていない、ⅲ人権と解した場合、信教の自由とは異なった独自の人権性がどこにあるのか不明確などと主張しています。
人権説
 政教分離は、それ自体が人権とします。信教の自由を強化ないし拡大するものと理解します。
 制度的保障説に対する批判として、制度的保障は、制度の核心ではない周辺部分は立法権で改変できるという理論であるから、政教分離の緩和と結びつくことになると主張します。

政教分離の限界

政教分離といっても、国家と宗教との関わり合いを一切排除する趣旨ではないと言われています。例えば、宗教団体設置の私立学校に対する補助金交付を他の学校と平等に行う必要があることが挙げられます。
そこで、国家と宗教との結びつきがいかなる場合に、どの程度まで許されるか問題とされます。

この点に関し、判例は、目的・効果基準(アメリカの判例法理)を採用していると言われています(ただし、アメリカの判例法理と全く同一なわけではなく、若干修正されています)。
有名な最高裁判決として、津地鎮祭事件判決(最大判昭和52年7月13日)があります。
同判決は、津市が市体育館建設にあたり神式の地鎮祭を行い、公金を支出したことが政教分離に反するかどうかが問題となったものです。  
最高裁判所は、「宗教的活動」とは、宗教との関わり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるもの、すなわち、①行為の目的が宗教的意義をもち、②その効果が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉等になるような行為に限られると判示しました。
その上で、神式の地鎮祭は、その目的は世俗的で、効果も浸透を援助、助長したり、他の宗教に圧迫干渉を加えるものではないから、宗教的行事といえず、政教分離に反しないとしました。
学説のなかには、最高裁がその他の事件などで政教分離を緩やかに解していると批判しているものがあります。 

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