相続法改正の解説22 [民法907条] 遺産の一部分割

遺産の一部分割

遺産の一部の分割を明確に認める規定が相続法改正で追加されています。一部分割.png

これまでは、遺産の一部のみを分割することが可能かどうかについて、民法の規定がありませんでした。
しかし、遺産分割については、遺産に不動産がある場合の金額評価や、不動産をどのように分けるかのように協議が長期化しやすい問題があります。
特別受益や寄与分についても、争いが深刻化しやすいものです。
このように、遺産分割を完全に終わらせるには長期間かかることがあります
他方、最高裁決定平成28年12月19日により預金も遺産分割の対象となった結果、例えば預金の分割方法については相続人間で争いがないような場合に、争いのない一部分のみを相続人で分割してしまうことを認めた方が当事者の利益に適うことがあります。

改正後の条文

そこで、改正後の民法907条は、以下のように、遺産の一部分割を認める内容の規定となりました。
1項 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部または一部の分割をすることができる。
2項 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部または一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
3項 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部または一部について、その分割を禁ずることができる。

改正後の民法907条1項により、相続人間で合意すれば、一部のみの遺産分割をすることが明確になりました。
同条2項によって、相続人は、遺産分割協議が調わない場合に、遺産の一部のみを対象とする遺産分割調停の申立てをすることができ、調停がまとまらない場合に、遺産の一部のみを対象とする遺産分割審判の申立てをすることができることになりました。

一部分割が認められない場合

ただし、他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合は一部分割は認められません。
例えば、他の共同相続人が、特別受益や寄与分について合理的な主張をしており、一部分割をしてしまうと、特別受益や寄与分の主張が認められたときに適正な分割ができなくなるような場合は、「他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合」に該当する可能性が高いと思われます。
ですが、どのような場合に一部分割が認められないかについては、まだ明確化しておりませんので、今後の裁判所の運用によって定まっていくと思います。

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