相続法改正⑩ 遺言執行者の権限の明確化等(4)

今回の相続法改正において、遺言執行者の権限の関係で、特定財産承継遺言という新たな言葉を使用した規定が追加されました。

それが、以下の1014条2項です。

遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

この条文で、特定財産承継遺言とは、遺産の分割方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言と規定されていますが、実務上、相続させる旨の遺言として今も頻繁に使われている遺言のことです。
遺言において、「妻に全ての預金を相続させる。」、「長男に、自宅土地建物を相続させる。」等と書かれているのは、この特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)であり、遺贈ではありません。
「妻に全ての預金を遺贈する。」、「長男に自宅土地建物を遺贈する。」と記載すれば、遺贈です。
内容的には同じように見えますが、特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)と、遺贈とは、別物なのです。

そして、最高裁判決平成3年4月19日は、この相続させる旨の遺言について、遺産分割方法の指定をする遺言だとしました。

どうして、わざわざ相続させる旨の遺言を利用されていたのかというと、いくつかメリットがあったからです。
一番大きかったのは、不動産登記の登録免許税を節税するためでした。
以前、遺贈の場合は固定資産評価額の1000分の25が不動産登記の登録免許税とかかりました。3000万円の土地で登録免許税が75万円かかりました。
これに対し、相続させる旨の遺言は登記原因が相続となり、固定資産評価額の1000分の6となって、3000万円の土地の登録免許税が18万円となり、4分の1以下になったのです。
それで、相続させる旨の遺言が頻繁に使われていましたが、平成15年の税制改正で、どちらでも1000分の4と同額になり、節税のメリットはなくなりました。

それでも、まだ相続させる旨の遺言には、いくつかのメリットがあります。
一つは、登記手続の際、相続させる旨の遺言を受けた者は、単独申請で自己名義にすることができます。
遺贈の場合は、受遺者は、単独で申請することができず、遺言執行者がいない場合は相続人との共同申請が必要となり、相続人の一人でも拒否されると、かなり面倒なことになります。
また、遺産が借地権や借家権の場合、相続させる旨の遺言の場合は、賃貸人の承諾を得る必要がありません。遺贈の場合は、賃貸人の承諾をもらわなければなりません。

そんなメリットがあるため、遺贈ではなく、相続させる旨の遺言の方が頻繁に利用されていますが、どうしても相続させる旨の遺言が利用できない場合があります。
それは、財産を受け取る人が法定相続人ではない赤の他人の場合です。
赤の他人の場合は、遺贈(遺言)または死因贈与(契約)にするしかありません。

この相続させる旨の遺言について、改正前の民法には明記した規定がありませんでしたが、改正後の民法1014条2項で特定財産承継遺言として明記されました。

同条項では、特定財産承継遺言があったとき、遺言執行者が、対抗要件を備えるために必要な行為をする権限があることが規定されています。
この点、既に述べたとおり、特定財産承継遺言では、これを受けた相続人は単独申請で登記を行うことが可能となっています。
ただ、最高裁判決平成11年12月16日は、別の相続人が失効した遺言書を使用して自己へ所有権を移転する不動産登記をしていたところ、遺言執行者が相続させる旨の遺言書に基づいて抹消登記手続や真正な移転登記手続を請求することを認めました。
1014条2項は、この最高裁判決の考え方を参考にし、また改正後の民法899条の2において法定相続分を超える部分の相続は対抗要件を備える必要があることが明記されたことから、対抗要件具備が重要となること等により、遺言執行者が対抗要件具備行為をする権限が認められたものと考えられています。

それから、改正後の民法1014条4項は、「前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。」となっています。
ですので、特定財産承継遺言で遺言執行者が指定されているものの、遺言執行者に不動産の登記移転手続請求することは認めないと遺言に記載されている場合は、遺言に従うことになり、遺言執行者は登記移転手続請求はできないことになります。

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