民法(債権法)改正の解説⑩ 意思表示の効力発生時期など 民法97条

改正前の民法97条は、隔地者つまり遠方にいる者同士(応答が直ちにされない状態)の意思表示の効力について規定していました。
しかし、遠方にいる者だけではなく、対話者も含め、一般的な意思表示の効力発生時期などについても区別せず規定するのが良いということで、以下のとおり、改正されています。

1 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

民法97条1項について

改正前の民法97条1項は、「隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」という規定でした。
しかし、隔地者間だけでなく、対話者間においても、区別せず、意思表示の効力発生時期は相手方に到達した時とするのが妥当として改正されたものです。

到達」について、例えば郵便物を本人以外の家族が受け取り、本人に渡されることがなかった場合や、内容証明郵便の配達時に不在であり、そのまま保管期間満了により戻ってきてしまった場合にも「到達した」といえるかどうかが問題となり、この改正においても別の表現が模索されました。

このような問題点について、最高裁判決昭和36年4月20日は、代表取締役が不在で、その娘がたまたま会社に遊びに来ていたところ、その娘が催告書を受け取り、権限なく代表取締役の印鑑を使って受領印を押して、代表取締役の抽斗に入れ、誰にも告げなかったという事例で、意思表示は了知可能な状態、つまりその勢力範囲内におかれることで足りるとし、「到達」に該当することを認めました。

このような判例から、「到達」という表現から、「了知または了知可能」という表現に変更することが法制審議会で提案されましたが、分かりにくいという意見があって見送られ、「到達」という表現が維持されました。
なお、了知とは、実際に相手方が受け取り、内容を確認したことを意味します。
上記最高裁判例は、民法改正後も、維持されるものと思います。

民法97条2項について

改正後の民法97条2項は、全く新しい内容となっています。

意思表示の到達を正当な理由なく妨げたときは、通知が通常到達すべきであった時に到達したものとみなされるというものです。
例えば、家賃を滞納している賃借人が、大家からの催促の書面が配達されてきたのを受領拒絶した場合、配達時点で到達したものとみなされます。

これに関連して、最高裁判決平成10年6月11日が、以前も遺産分割で通知が送られてきた弁護士から遺留分減殺請求の内容証明郵便が送られてきたところ、不在で受け取らず、その後も受け取らないまま保管期間満了で差出人の弁護士に還付された事例で、弁護士からの書面が遺産分割か遺留分に関するものではないかと推知できたことや、郵便の受領もさしたる労力なくできたこと等から、社会通念上了知可能な状態におかれ、遅くとも保管期間が満了した時点で到達したものと判示しました。
この最高裁判決は、正当な理由なく到達を妨げたということを全面に出しておらず、あくまで社会通念上了知可能な状態とし、到達を認めたものです。
ただ、改正前の民法の解釈であることから、改正後は、最高裁判決の事案では、民法97条2項の正当な理由なく到達を妨げたものとして、到達したものとみなされることになると思います。
ですが、今後、突然弁護士から内容証明郵便が送付されてきたが不在で保管期間満了によって還付された場合はどうか等のように、どのような状況のときに、正当な理由なく妨げたとして到達が認められるかについて、裁判例の集積が待たれます。

民法97条3項について

改正後の民法97条3項は、改正前の民法97条2項をほぼ踏襲した規定です。
改正後の民法3条の2で意思能力の規定が追加されたことから、意思能力を喪失した場合についても規定されることになりました。
これにより、表意者が意思表示の通知を発した後に、死亡・意思能力の喪失・行為能力の制限を受けることになったときでも、有効な意思表示として取り扱われます。
ただし、改正後の民法526条において、申込みの意思表示の場合の例外が定められています。

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