相続法改正の解説30 対抗要件の要否(2) 民法899条の2第1項

引き続き、相続における対抗要件の要否に関して改正された民法899条の2第1項について、解説していきたいと思います。

遺言がある場合

前回は遺言がない場合でしたが、今回は遺言がある場合です。

民法899条の2第1項は、法定相続分を超えて取得する部分については、登記などの対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができないと規定されています。

したがって、例えば相続人として長男と次男の2人がいる父親が、自宅土地建物を長男に全て相続させるという遺言をした上で死亡した場合に、父親にお金を貸していた債権者が、次男も自宅土地建物に2分の1の相続分があると考えて差押をしたときに、長男が自分が全て相続したという登記を先に備えていた場合は差押が認められませんが、長男が登記をしていなかった場合は差押が認められることになります。
つまり、長男は、自己の法定相続分を超える部分については、登記を備えないと、第三者に対抗できないため、第三者の差押が優先されてしまうのです。

この点、改正前は、条文がなかったため、判例によって決められており、遺言の内容によって運用が異なっていました
上記のような相続させる旨の遺言によって不動産を取得した者は、登記を備えなくても、第三者に対抗できるものとされていました(最高裁判決平成14年6月10日)。
したがって、改正前と改正後で、運用が変わることになりました。
今回の改正によって、遺言内容を通常知り得ない第三者が保護されることになったのです。

遺言執行者の指定がある遺贈の場合

他に、遺言執行者の指定がある遺贈の場合に、改正前は、最高裁判例で、遺贈で不動産を取得した者は登記を備えなくても、第三者に対抗できることが認められていましたが、改正後の民法899条の2によって、自己の法定相続分を超える部分については登記を備えないと第三者に対抗できないことになりました。
同様に、相続分を指定する遺言(民法902条)によって法定相続分を超えて不動産持分を取得した場合も、判例で登記を備えずに第三者に対抗できることになっていましたが、今回の改正によって、自己の法定相続分を超える部分は登記を備えなければならないことになりました。

遺言執行者の指定のない遺贈の場合

なお、遺言執行者の指定のない遺贈の場合には、以前の最高裁判決において、登記をしなければ、遺贈による取得を第三者に対抗できないとされていましたので、今回の改正前も改正後も運用は変わりません。

このように、以前は、どのような内容の遺言であるかによって、対抗要件の要否が異なって複雑であったこと、遺言内容を知らない第三者が不当に損害を被るおそれがあったことから、今回の改正の対象になったのだと思います。
改正後の民法899条の2第1項によって、遺言内容にかかわらず法定相続分を超える部分について対抗要件が必要というルールが明確化し、第三者が保護されることになりました。

出典:法務省ホームページhttp://www.moj.go.jp/content/001263489.pdf

相続の効力等に関する見直し.png

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