相続法改正の解説29 対抗要件の要否(1) 民法899条の2第1項

民法899条の2第1項の追加

相続法改正において、これまで規定されていなかった対抗要件の要否についての条文が加わりました。

相続法改正で加わった民法899条の2第1項は、以下のとおり規定されています。

相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。


民法上、例えば不動産について、売買契約で所有権を取得したことを第三者に対抗するためには、対抗要件である登記を備えることが必要とされています。対抗要件.jpg
これを対抗要件主義と言います。
動産についても、第三者に対抗するためには引渡しという対抗要件を備えることが必要とされています。
相続により不動産や動産の所有権を取得した場合にも、対抗要件である登記や引渡しを備える必要があるかに関し、民法899条の2第1項の規定が加わったものです。

相続法改正前は、条文がなかったため、最高裁判例によって規律されていました。
民法899条の2第1項は、最高裁判例の結論を踏襲している部分と変更している部分があります。

遺言がない場合

以下において、遺言がない場合の同条による具体的処理を見ていきます。
遺言がない場合で、相続人が法定相続分を超える部分を対抗できるかという問題と、法定相続分を超えない部分を対抗できるかという問題に分けることになります。

法定相続分を超える部分を対抗できるか

死亡した被相続人には長男と次男の2人の相続人がいるところ、遺産の甲土地について、長男と次男が2分の1ずつ共同相続した旨の登記をした後、遺産分割協議の結果、長男が甲土地の所有権を全部取得することが合意されました。
ところが、長男が甲土地を全部取得した旨の登記をする前に、次男がまだ共同相続した登記になっていることを奇貨として、甲土地の共有持分をZ氏に売却してしまいました
この場合に、長男が、甲土地の所有権を全部取得したことをZ氏に対抗できるかどうかが問題となります。
民法899条の2第1項は、前記のとおり、法定相続分を超える部分については対抗要件である登記を備えなければ第三者に対抗することができない旨を規定しています。
したがって、長男は、対抗要件である登記を備えていないことから、遺産分割により甲土地の次男の持分についても取得したことをZ氏に対抗できず、Z氏が2分の1の共有持分を取得できることになります(ただし、Z氏がいわゆる背信的悪意者に該当する場合は例外的にZ氏に対抗できます。)。
なお、この結論については、従来の最高裁判例(最判昭和46年1月26日)と同じ結論です。
つまり、今回の相続法改正前後で実務上の運用に変更ありません。

法定相続分を超えない部分を対抗できるか

また、同じような事例で、次男が甲土地について勝手に単独所有となった旨の登記をした上で、甲土地全ての所有権をZ氏に売却した場合に、長男が自己の法定相続分を登記なしでZ氏に対抗できるかどうかという問題があります。
これについて、民法899条の2第1項は、法定相続分を超える部分は対抗要件を備えなければならないという規定であることから、反対解釈として、長男は自己の法定相続分を登記なくしてZ氏に対抗できることになります。
この場合についても、従来の最高裁判例(最判昭和38年2月22日)と同じ結論となっており、改正前後で運用に変更がありません。

次回、運用が一部変更されている遺言がある場合を解説していきたいと思います。

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