当事者(民事裁判)

当事者とは、民事裁判において、自己の名で裁判を求める者と、これに対立する相手方のことをいいます。

自己の名で裁判を求める者が原告といい、これに対立する相手方が被告といいます。
刑事裁判でも当事者は存在し、裁判を求めるのが検察官であり、その裁判の対象となるのが被告人です。
ここでは、民事裁判での当事者について説明します。

民事裁判での当事者を上記のように考えることを形式的当事者概念といいます。
これに対し、実質的当事者概念とは、裁判の対象である訴訟物となっている権利義務の主体を当事者と考えます。
日本では、形式的当事者概念が通説です。

民事裁判では、常に、相対立する2つの当事者が存在します。このことを二当事者対立構造(二当事者対立の原則)といいます。

また、当事者の確定という問題があります。これは、その裁判において誰が当事者であるかをどのように決めるかという問題です。
通常の裁判では、当事者が誰であるかは明らかであり、問題になる余地はないはずです。しかし、例えば、有名人の偽者がその有名人の名を騙って裁判を起こした場合、その裁判の当事者は名前を騙った偽者なのか、それとも名前を使われた有名人なのかなどの場合に問題が起きます。これを氏名冒用訴訟といいます。このような場合に、誰が当事者であるか、実際上としては、裁判所が誰を当事者として取り扱うべきなのかなどという点が問題になるのです。

当事者の確定については、様々な学説があります。
①意思説…原告の意思に基づいて当事者を定めるとします。
②行動説…裁判のなかで当事者として行動している者を当事者とします。
③表示説…訴状に当事者として記載されている者を当事者とします。この表示説のなかで、ⅰ訴状の当事者欄の表示のみを基準とする形式的表示説とⅱ当事者欄の表示だけでなく、請求の趣旨・原因の記載をも考慮する実質的表示説に分かれます。
④規範分類説…手続の進行面(これから手続を始める。行為規範)は表示説を採用し、既に手続が進行した後(評価規範)は行動説を採用する説です。2つの状況に応じて、基準を変えています。

当事者の確定が問題となる具体例として、先ほどの氏名冒用訴訟があります。例えば、甲が乙に訴訟を提起したが、甲と通謀している丙が乙になりすまして乙として振る舞って(乙に不利な行動をとり)、甲勝訴の判決がなされた場合を想定します。
この場合に、上記各学説の結論は、以下のとおりです。
①意思説…乙が当事者になります。判決後の乙の救済手段は、上訴・再審になります。
②行動説…被告として振る舞った丙が当事者になります。結果、乙に判決の効力は及びません。乙は、上訴・再審ではなく、判決の無効を主張することができます。
③表示説…非冒用者である乙が当事者とします。つまり、乙に判決の効力が及びます。判決後の乙が救済される手段は、上訴(控訴、上告)・再審とされます。
④規範分類説…手続の進行面では、乙が当事者ですが、評価規範では、丙が当事者です。つまり、上記のように既に判決が出た事例では、乙は、評価規範の面で問題となる当事者ではなく、そのため乙は上訴・再審ではなく、無効を主張することができます。
このような事例で大審院判決昭和10年10月28日判決は、判決の効力は冒用者にのみ及び、非冒用者には及ばないとしましたが、訴訟代理人が選任され、判決が言い渡された場合には、既判力が冒用者に及ばず非冒用者に及ぶと判示し、非冒用者からの再審の訴えを認めました。

また、原告甲が裁判を起こしたところ、被告とされた乙は既に死亡し、乙の相続人丙が訴状を受領し訴訟手続が進められ、判決後に乙の死亡が発覚したというような場合でも当事者の確定が問題になります。これを死者名義訴訟といいます。
①意思説…一概には当事者を確定できないところですが、乙の相続人丙が訴訟行為を行った場合、丙が当事者となります。判決後に乙の死亡が発覚した場合でも、判決は丙に対して有効です。仮に、判決前に発覚してもそのまま丙が被告として続行されます。
②行動説…丙が当事者になります。判決は丙に対して有効なものです。
③表示説…乙が当事者です。判決は、死亡した乙に対するものであり、無効です。仮に、判決前に乙の死亡が発覚すれば、訴え却下になります。
④規範分類説…既に出た判決は、評価規範の問題となり、当事者は丙になりますので、判決が丙に対するものとして有効です。
この問題について、大審院判決昭和11年3月11日は、相続人が訴訟行為を行った事案で、相続人を実質上の被告とし、表示の訂正を認めて、以後は相続人を当事者として取り扱いました。この判例は意思説に立っていると言われています。
なお、仮に被告乙が死亡したのが訴訟係属発生後の場合には、訴訟中断・受継の問題となり、当事者の確定の問題はありません。

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