執行猶予(全部)

執行猶予(全部)とは、刑事事件において、有罪判決が言い渡される執行猶予.jpg
際、情状によってその刑の執行を1年~5年間猶予し、その期間を無事経過したときには、刑の執行を受けないことになる制度のことです。

平成25年6月に、一部の執行猶予を新設する刑法一部改正の法案が成立し、平成28年6月1日から施行されています。
ここでは、全部の執行猶予について、説明します。単に執行猶予という場合、全部の執行猶予のことです。
一部の執行猶予については、別の箇所で説明します。

一般的に、執行猶予が問題となるのは、刑事裁判において、3年以下の懲役禁錮という比較的短期の有罪判決が出る場合です。
一応、法律上は罰金刑でも、執行猶予を付すことが可能となっていますが、実務上は滅多にありません。

執行猶予が付けば、ひとまず刑務所に行かなくて済むのに対し、執行猶予が付かなければ実刑となり、刑務所に行くことになります。
したがって、執行猶予が付くか付かないかで、大きく結果が異なることになります。

執行猶予については、基本的に、刑法25条~27条に規定されています。

執行猶予の要件として、まず言い渡される刑が、3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金であることが必要です。
したがって、例えば、死刑や無期懲役、懲役20年、懲役10年、禁錮5年の有罪判決の場合、執行猶予が付くことはありません。

次に、以下のいずれかに該当することが必要です。
①以前に禁錮以上の刑に処せられたことがない場合。
②以前に禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない場合。
③以前に禁錮以上の刑で執行猶予が付された者が、執行猶予期間中に、1年以下の懲役・禁錮の言渡しを受けることになり、かつ、保護観察期間中に罪を犯していない場合。
③については、再度の執行猶予と言われます。

これらの要件を満たしても、必ず執行猶予が付されるわけではありません。
情状、つまり被告人が罪を犯すに至った状況や被告人のこれまでの生活状況等を考慮して、裁判官が執行猶予を付すかどうかを判断することになります。
特に、③再度の執行猶予については、情状に特に酌量すべきものがあることが必要とされています。

例えば、初犯で①に該当する場合で、言い渡される刑が3年以下の懲役であっても、執行猶予が認められず、実刑になることがあるのです。
③再度の執行猶予は、どちらかと言えば、例外的に認められるものだと思います。

執行猶予期間中にさらに罪を犯して有罪判決が出た場合は、再度の執行猶予が認められない限り、基本的に、以前の執行猶予が取り消されます。
執行猶予の取消しの結果、刑の執行を受けることになります。

執行猶予期間を無事経過すると、「刑の言渡しは、効力を失う。」と刑法27条で規定されています。
これにより、刑の執行を受けないで済むことになると共に、刑の言渡しの法的効果が将来に向かって消滅します。
法的効果が消滅するというのは、国家資格等で前科があると認められなかったのが、資格が取得できるようになります。
また、上記の執行猶予の要件において、以前に禁錮以上の刑に処せられたかどうかに関し、執行猶予期間を満了すると、以前に禁錮以上の刑に処せられていないことになります。

ただし、執行猶予付有罪判決の前科が完全になくなるわけではありません。
執行猶予期間が満了したとしても、検察庁や警察署で、前科の情報は残り続けますし、再犯になった場合、前科の存在が裁判所に示されることになります。

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