使用窃盗

使用窃盗とは、一時的に使用した後に返還するつもりで、他人の物自転車.jpg
を勝手に使用することです。

具体例としては、駐輪場にある他人の自転車を勝手に使用し、用事を済ませて1時間後に、元の位置に戻すという行為が使用窃盗に該当します。
使用窃盗は、一時的な窃盗という言い方もできると思います。

使用窃盗について、窃盗罪の成立を認めるか、どのような場合に窃盗罪の成立を認めるかなどが学説上議論され、実際の裁判例も出ています。

細かな論理について学説上の争いはありますが、概ね判例も学説も同じような結論に落ち着いていると思います。ただし、後述するとおり、異なる学説はあります。

それは、①原則として使用窃盗は窃盗罪の成立を認めないが、②自動車の長時間の使用や、③機密書類をコピーする目的での持ち出し、④返還せずに乗り捨てる意思であった場合のように、処罰する必要性が高いものについては、窃盗罪の成立を認めています。

裁判例としては、以下のようなものがあります。
①2~3時間利用して返還する意思で、自転車を無断で利用した場合に、窃盗罪の成立を否定したもの(京都地裁判決昭和51年12月17日)。
②他人の自動車を返却する意思で勝手に約4時間乗り、無縁許運転で返却前に検挙された場合に、窃盗罪の成立を肯定したもの(最高裁決定昭和55年10月30日)。
③勤務先の機密資料をコピーして別の会社に渡す目的で2~3時間持ち出しコピー後に返却した場合に、窃盗罪の成立を認めたもの(東京地裁判決昭和55年2月14日)。
④強盗犯人が逃走中に、乗り捨てる意思で、海岸に係留してある船を岸からこぎ出した場合に、窃盗罪の成立を認めたもの(最高裁判決昭和26年7月13日)。

判例が、使用窃盗について、窃盗罪の成立を否定する場合の論理は、不法領得の意思が欠けると判示しています。
なぜ、このような難しい理屈を持ち出すかといえば、窃盗罪は、他人の物を自己の支配下においた時点で、成立する犯罪です。
そのため、自己の支配化においた後に自分の物にするのか、返却するのかを問うためには、自己の支配下においた時点での意思の問題として取り上げる必要があるのです。
複雑な話ですが、他人の自転車を勝手に乗り始めた時点で検挙された場合でも、窃盗罪の成否を判断する必要がありますので、実際に返却したかどうかではなく、返却する意思があったかどうかの問題になるということです。

学説によっては、不法領得の意思の問題にせず、一時的な使用の場合は、可罰的な占有侵害がないとして、主観的な問題ではなく客観的な問題として処理すべきとする説もありますが、少数です。
ただし、多数説は、不法領得の意思の問題とします。

また、使用窃盗について、窃盗罪の成立を肯定する学説もあります。

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