強要罪

強要罪とは、相手方またはその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加える旨を告知して脅迫し、または暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害する犯罪です。
強要罪の規定は、刑法223条です。
強要罪の刑事罰は、3年以下の懲役です。

強要罪は、暴行・脅迫を手段として、一定の行動をすること・しないことを強要する犯罪です。
本罪の保護法益は、人の意思決定の自由・意思実現の自由とする説が有力とされています。

脅迫については、一般に、害悪の告知とされています。
強要罪が成立するには、相手方本人またはその親族に害を加えることを告知したことが必要です。
したがって、親族ではない第三者、例えば恋人、友人に対して害を加えることを告知し、強要をしたとしても、強要罪は成立しないものと思われます。
脅迫罪も、強要罪と同様に、相手方本人またはその親族に対し害を加えることを告知した場合にのみ成立します。

さらに、害悪の内容として、生命・身体・自由・名誉・財産に対して害を加えるものであることが必要とされ、対象が限定されています。
脅迫の対象になりやすいものは大体含まれていると思いますが、貞操に対して害を加えることを告知した場合についても、明記はありませんが、強要罪が成立することを認めるのが多数説です。

また、暴行による場合でも、強要罪が成立します。
暴行については、一般に、不法な有形力の行使といわれます。
暴行罪が成立するには、人に身体に向けられた有形力の行使であることが必要ですが、強要罪の場合には、身体に向けられる必要はないと解されています。
例えば、被害者の所有物を踏んだり、投げつけたりして破壊する行為は、身体に向けられていなくても、強要罪の暴行に該当すると考えられています。
そのような暴行の概念は、公務執行妨害罪における暴行と同様と言われています。

それから、暴行・脅迫を受けた者と行動を強要された者が、同一人であることが必要であるかという点について、学説上の争いがあります。
例えば、プロ野球選手の恋人を脅迫し、プロ野球選手にわざと三振させるように申し向け、その選手が恋人の依頼でわざと三振した場合、脅迫を受けた者と行動を強要された者が別人ですが、この場合でも強要罪の成立を認めるべきとする説があります。
これに対し、このような間接的な影響を及ぼす場合に、強要罪の成立を認めるべきでないとする説もあります。

そして、人に義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害することが必要です。
「義務のないこと」について、法律上の義務のないことかどうかについて争いがあります。
つまり、法律上の義務でないだけでなく社会通念上なすべきとされていないことも必要とする説があり、法律上謝罪する義務がない場合でも社会通念上謝罪すべき場合には、それを強制しても強要罪にはならないとする説があります。
ただし、この説も、強要罪は認めなくても、手段である暴行・脅迫行為に関して、暴行罪脅迫罪の成立は認めます。
したがって、この学説の争いは、法律上の義務ではないが社会通念上なすべきとされていることを暴行・脅迫によってさせた場合に、強要罪の成立を認めるか、暴行罪・脅迫罪のみの成立とするかの問題であり、いずれにせよ犯罪が成立するという点では結論に大差ないともいえると思います。

なお、法律上の義務があることを暴行・脅迫によって強制した場合についても、強要罪の成立を認める見解と暴行罪・脅迫罪の成立のみを認める見解とがあります。

実際の裁判例としては、使用人の13歳の少女に対し、水入りバケツや木製の椅子を頭上や胸のあたりに持たせて数時間から数十分間にわたり立たせた行為について、強要罪を認めた大審院判決大正8年6月30日があります。13歳の少女が使用人として働いていること自体が、時代を彷彿とさせる判決です。
また、病院の患者が院長を脅迫し、看護師を別の部署に異動させた場合にも、強要罪が認められています(広島地裁判決平成21年3月4日)。

権利の行使を妨害することについても、法律上の権利であることが必要かについて、学説上の議論があります。
ただし、法律上の権利であることが必要とする説も、法律に明記されている権利だけでなく、権利ということを広く解しているものと思われます。
裁判例では、猟犬の競技の岡山県大会で入賞し、全国大会に参加できることになった者に対し、脅迫をし、全国大会への参加を断念させた場合について、強要罪の成立を認めた岡山地裁判決昭和43年4月30日があります。

強要罪は、未遂も処罰されます(刑法223条3項)。
したがって、暴行・脅迫行為をし、強要しようとしたが、被害者が頑と応じなかった場合でも、強要未遂罪で処罰されます。

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