逮捕罪

逮捕罪とは、不法に人を逮捕する犯罪です。
逮捕罪は、刑法220条に規定されています。
逮捕罪の刑事罰は、3月以上7年以下の懲役です。

逮捕罪は、監禁罪と共に、人の身体活動の自由、人身の自由を保護するためのものです。

不法に」という要件については、逮捕行為に関して、警察官による逮捕令状に基づく被疑者に対する逮捕のように、適法なものが存在することから、注意的に規定されているものと解されています。
警察官等による適法な逮捕は、違法性を欠くことにより、逮捕罪に該当しないことは当然のことですので、「不法に」という要件は、特別の意味はないということになります。

逮捕罪における「」については、学説上議論があります。
まず、人の身体活動の自由を保護するためのものであることから、自らの意思に基づく活動を行う能力のない、生まれたばかりの嬰児、意識喪失状態の者、極度の精神障害者は、逮捕罪の対象にならないと一般的に解されています。
ただし、監禁罪の事例ですが、京都地裁判決昭和45年10月12日は、1歳7か月の幼児に対する監禁罪の成立を認めています。
多くの学説は、このくらいの幼児であれば、事実的に任意の行動をとることができるとし、同判決に賛成しています。

次に、熟睡中の者、泥酔者のように、一時的に自らの意思に基づく身体活動を行う能力を失っている者に対する逮捕罪が成立するかどうかについて、争いがあります。
身体活動の自由は、可能的自由とする説があります。この説は、移動の可能性・選択肢を有しているという可能的自由に意義があるとし、熟睡中の者を逮捕して、その者が全く起きなかった場合にも可能的自由が侵害されているとし、熟睡中の者への逮捕罪の成立を認めます。
これに対し、現実的自由を保護すれば足りるとする説があります。この説は、現実に移動しようと思ったときに移動できる状態であれば良いとし、熟睡中の者への逮捕罪の成立を否定します。
多数説は、可能的自由説であり、判例も同様と言われています。

関連して、被害者が自分が逮捕されているという認識を有していることが、逮捕罪成立の要件であるかについても、争いがあります。
多数説は、可能的自由説を前提に、被害者が自分が逮捕されているという認識を有している必要はないと解釈しています。

本罪の逮捕とは、人に直接的な強制作用を加えて、身体活動の自由を奪うことです。
手段は問わないと考えられています。
例えば、ロープで身体を縛り付けて動けないようにすることが逮捕に該当します。ただ、後ろ手にして縛った程度の場合は、身体活動の自由を確実に奪っておらず、暴行罪にとどまるとする説が多数です。
また、拳銃を突きつけて「動くな」と言う場合のように、無形的な方法についても、本罪が成立し得るが、自由意思が完全に奪われる程度であることが必要とする説が有力です。
逮捕に該当するためには、ある程度の拘束時間が継続する必要があると考えられています。
大審院判決昭和7年2月29日は、縄で両足を縛って5分間引きずり回した事案で、逮捕罪の成立を認めています。
逮捕罪が成立する場合には、暴行罪脅迫罪の行為が手段として行われていることが多いですが、暴行罪脅迫罪は逮捕罪に吸収され、逮捕罪一罪が成立します。

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