現住建造物等放火罪

現住建造物等放火罪とは、放火して、現に人が住居に使用し、または現に人がい39 現住建物等放火罪.pngる建造物等を焼損した場合に成立する犯罪です。

現住建造物等放火罪は、刑法108条に規定があります。
現住建造物等放火罪の刑罰は、死刑、無期懲役、5年以上の有期懲役です。

多くの死傷者や多大な財産的損害が発生した大火災の存在などの歴史的背景もあり、火災は、木造家屋が多い日本において、甚大な被害の拡大をもたらすおそれがあり、また人命も危険にさらすことから、放火罪には非常に重い刑事罰が科されます。
現住建造物等放火罪は、現に人がいる建造物等を放火するもので、人命の危険性が高いことから、放火罪のなかでも最も重い刑罰となっています。

放火とは、目的物に点火することです。
直接目的物に点火する場合だけでなく、着火剤等の媒介物を使用する場合も含みます。
ですから、人の住む家屋に火を放つ目的で、隣接する物置小屋に点火した場合に、物置に対する放火ではなく、家屋である現住建造物放火罪が成立することになります。

現住建造物等放火罪の対象は、現に人が住居に使用し、または現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑です。
建造物とは、家屋その他これに類似する建造物のことです。具体的には、屋根を有し、壁・柱によって支えられたもので、土地に定着し、人が出入りすることができることが必要です。
汽車とは、蒸気機関を動力とし、軌道上を運行する交通機関のことです。現在は蒸気機関車はまず見ませんが、ガソリンや軽油で動く列車も汽車に含むと解されています。
電車は、電力によって軌道上を運行する交通機関のことです。
艦船は、軍艦その他の船舶のことです。
鉱坑とは、鉱物を採取するために掘られた坑道その他の地下設備のことです。

「現に人が住居に使用」とは、起臥寝食する場所として犯人以外の者が日常利用していることです。
一日中、常に人がいる必要はありません。
学校の宿直室のように、夜間だけ使用している場所であっても、住居に使用されていると言えます。
また、別荘のように人が住んでいる期間が限定的な場合でも、住居に使用されていると最高裁判例で認められています。
ただし、全くの空き家は、住居に使用されているとは言えません。

「現に人がいる」とは、放火行為の時に内部に犯人以外の人が現実にいることです。

放火行為の結果、「焼損した」と言える場合に、放火罪が既遂になります。
放火行為をしたが、焼損に至らないときは、未遂犯として処罰されます(刑法112条)。
焼損とは何を指すかについて、学説上の争いがあります。
判例の見解は、火が媒介物を離れて、目的物が独立に燃焼を継続するに至った状態を焼損とします。これを独立燃焼説と言います。
最高裁決定平成元年7月7日は、マンションのエレベーターに火を放ち、エレベーターの側壁の化粧鋼板0.3平方メートルが燃焼したという程度の事案でも、焼損に至ったと認め、現住建造物放火罪の成立を認めています。
判例に反対する学説として、効用喪失説等があります。効用喪失説とは、目的物の重要部分が焼失し、その効用を失ったことが焼損であると主張します。判例より焼損が認められる時期が遅くなります。この説は、判例の独立燃焼説だと、木造家屋等はあありに早い時期に焼損が認められてしまうと批判します。

放火罪は、最初から故意に放火行為をした場合だけでなく、偶然に火が点いてしまったのを放置することで、火が燃え広がって家屋が焼損した場合にも、不作為の放火として認められることがしばしばあります。
判例は、このような事案で、既発の火力を利用する意思があれば、火を消し止めずに放置したことで焼損に至った場合に、不作為の放火罪の成立を認めます。

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