証拠隠滅等罪

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証拠隠滅等罪とは、他人の刑事事件に関する証拠を隠滅・偽造・変造した場合、または偽造・変造の証拠を使用した場合に成立する犯罪です。
刑法104条に規定があります。
証拠隠滅等罪の刑罰は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

証拠隠滅等罪の対象は、他人の刑事事件に関する証拠です。
したがって、自分の刑事事件の証拠を隠滅することは、犯罪にはならないのです。
ただし、自分の刑事事件の証拠であると同時に、他人の刑事事件の証拠でもある場合について、学説上の争いが以下のとおりあります。
特に、共犯事件においては、自分の刑事事件の証拠が他の共犯者である他人の刑事事件の証拠であることがあり得ることから、問題とされます。
①肯定説...他人の刑事事件の証拠でもあることから、証拠隠滅等罪の成立を認めます。
②否定説...自己の刑事事件の証拠である以上、証拠隠滅等罪にはならないとします。
③一部肯定説...もっぱら他人のために証拠隠滅等をした場合、証拠隠滅等罪の成立を認めます。
古い判例で、①の見解をとったものと、③の見解をとったものであります。

また、犯人が自己の刑事事件に関する証拠を第三者に隠滅するよう依頼した場合、犯人において証拠隠滅等罪の教唆犯(刑法61条)が成立するか問題となります。
最高裁判所は、他人を利用してまで証拠隠滅する行為は、防御の範囲を超えるとし、証拠隠滅等罪の教唆犯の成立を認めます。
なお、犯人から依頼されて証拠を隠滅した第三者は、当然、証拠隠滅等罪に該当します。

それから、刑事事件に関する証拠であることが必要です。
つまり、民事事件でしか問題にならない証拠を隠滅しても証拠隠滅罪は成立しません。
少年事件については、刑事事件に含まれるとした裁判例があります。

隠滅とは、証拠の顕出を妨げ、証拠としての価値を滅失・減少させる行為です。
例えば、証拠を物理的に破壊したり、隠したりすることを含みますし、証人を隠す行為も該当します。

偽造とは、実在しなかった証拠を新たに作り出すことです。
変造とは、実在の証拠に変更を加えることです。
偽造・変造の証拠を使用とは、偽造・変造された証拠であることを知りながら捜査機関・裁判所に提出することです。

刑法105条において、証拠隠滅等罪について、犯人の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除できると規定されています。
犯人の親族が犯人のために証拠隠滅等罪を犯してしまうのは、自然の人情、情誼に由来すると言われています。
親族とは、民法上親族とされる者であり、親、子、配偶者、祖父母、孫等を含みます。
免除できる場合、裁判官は刑の免除(刑事訴訟法334条)を言い渡すことができます。刑の免除は有罪判決の一つではあります。
ただ、刑が免除されるような場合は、検察官起訴せず、不起訴にすることが多いと思われます。
ですが、刑法105条は、必ず免除になるのではなく、免除される場合があるという任意的なものです。

なお、平成28年6月23日施行の刑法一部改正により重罰化されて、上記の刑罰とされています。
以前は、2年以下の懲役または20万円以下の罰金とされていました。

※記事の最新の更新日 令和4年9月24日

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