加重逃走罪

加重逃走罪とは、裁判の執行により拘禁された既決・未決の者または勾引状の執行を受けた者が、拘禁場・拘束の器具を損壊し、暴行・脅迫をし、二人以上通謀し、逃走した場合に成立する犯罪です。

加重逃走罪は、刑法98条に規定があります。
刑罰は、3月以上5年以下の懲役です。

加重逃走罪は、基本的に、逃走罪の行為態様がより悪質な場合に刑罰が重くなっているものです。
ちなみに、逃走罪の刑罰は、1年以下の懲役でした。

また、加重逃走罪では、逃走罪の対象であった、裁判の執行により拘禁された既決・未決の者だけでなく、勾引状の執行を受けた者も対象になりました。
勾引状が何を指すかについては、学説上の争いがあります。
一つは、法律において証人などの身柄を拘束する「勾引」として明確に規定されている場合とする見解です。
刑事訴訟法で、裁判所の召喚に応じない証人に対して勾引することができること(刑事訴訟法152条)、身体検査のために裁判所が被告人以外の者を召喚したにもかかわらず召喚に応じない者を勾引できること(刑事訴訟法135条)などが規定されています。
また、民事訴訟法でも、裁判所は正当な理由なく出頭しない証人を勾引することができることが規定されています(民事訴訟法194条1項)。
人身保護法にも勾引の規定があります。
これらの法律上規定されている勾引の場合が加重逃走罪の対象になったとするのが上記見解です。
この見解に対し、勾引状とは、広く身体の自由を拘束する令状を指すとする見解があり、この見解は法律上「勾引」として明確に規定されているものに限らないとします。

また、逮捕状で逮捕された者は、加重逃走罪の対象になるか問題とされています。
この点、多数の学説は、逮捕状で逮捕された者は、加重逃走罪の対象になることを肯定します。
その根拠としては、勾引に準じて取り扱うとする見解と、加重逃走罪の勾引状は広く身体の自由を拘束する令状を指すことから逮捕状も含まれるとする見解に分けられます。
なお、逮捕状による逮捕ではなく、緊急逮捕で逮捕状が執行されていない状況または現行犯逮捕の場合には、加重逃走罪の対象にはなりません。

加重逃走罪は、①拘禁場・拘束の器具の損壊、②暴行・脅迫、③二人以上の通謀のいずれかを行った上で、逃走した場合に成立します。

拘禁場とは、監獄、留置場などの身柄拘束の施設のことです。
拘束の器具とは、手錠、捕縄などの身体を拘束する器具のことです。
これらを損壊するということは、物理的な損壊のことであり、単に手錠を外すことや捕縄を投げ捨てることは、損壊には該当しないと考えられています。

暴行・脅迫については、公務執行妨害罪の暴行・脅迫と同様に考えられており、広く解されています。
暴行は、看守者への直接的な暴行だけでなく、間接的な暴行も含みます。 暴行罪における暴行より広い概念です。
脅迫は、人を畏怖させる害悪の告知を広く含み、脅迫罪が成立する場合に限られません。

二人以上の通謀とは、二人以上の者が共に逃走するため意思を通じることです。
そのため、一人が逃走し、もう一人は自分は逃走しないが逃走者に協力したという場合には、加重逃走罪は成立しないと解されています。
この場合は、逃走した者が逃走罪に該当し、逃走に協力した者は逃走援助罪に該当します。

これらの行為の実行に着手したが、結局逃走できないまま捕まってしまった場合には、加重逃走罪の未遂(刑法102条)となります。
結局捕まってしまった場合でも、一旦は逃走して身柄拘束から抜け出した場合は、未遂ではなく既遂です。

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