中立命令違反罪とは、外国同士が戦争状態にあるときに、日本国が出した中立命令に違反する行為をした場合に成立する犯罪です。
刑法94条に規定があります。
中立命令違反罪の刑罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
中立命令違反罪は、外国国章損壊罪、私戦予備罪、私戦陰謀罪と共に、国交に関する罪(刑法第4章)として規定されています。
中立命令違反罪は、外国同士で戦争(国際法上の戦争だけでなく事実上の戦争も含みます。)が行われている状況で、中立国としての日本国が局外中立命令を出した場合に問題となります。
局外中立命令とは、中立国としての日本国が、いずれの国にも加担しないことを宣言し、国民に対してもいずれの国にも便益を与えてはならないことを命令するものです。
日本国憲法下で局外中立命令が出されたことはないようですが、政令または法律の形式で出されることがあり得ると考えられています。
局外中立命令は、現行刑法下では、伊土戦争(イタリア王国とオスマン帝国との戦争。1911年~1912年)の際に、詔勅(明治憲法下の天皇の公的な意思表示)の形式で出されています。
局外中立命令の具体的内容は、個別の局外中立命令によって異なります。
したがって、中立命令違反罪は、白地刑罰法規と言われます。
白地刑罰法規とは、法律が刑罰の種類と程度を規定し、その犯罪の具体的内容を他の法令等に譲っている刑罰法規のことです。
中立命令違反罪は、局外中立命令に違反する行動は、国際信義に反し、日本国の国際的地位が低下するおそれがあることから規定されたものと言われています。