民法(債権法)改正の解説48 [民法291条、292条] 地役権の消滅時効

地役権の消滅時効について規定している民法291条、292条が今回の民法改正の対象となっています。

いずれも実質的な変更はなく、形式的な改正です。

以下で、民法291条、292条の改正について、解説します。

改正後の291条について

改正後の291条は、以下の条文です。

第166条第2項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。


291条は、地役権の消滅時効について規定しています。送電線.jpg
地役権は、自分の土地の便益のために他人の土地を利用する権利であり、通常は土地の所有者同士での契約により権利が発生します。

この地役権については、民法166条2項により、所有権以外の財産権は20年間権利を行使しないときに時効により消滅するという規定の適用を受けます。

この地役権の消滅時効の起算点について規定したのが、291条です。

継続的に行使される地役権かどうかによって、消滅時効の起算点を分けて規定しています。

継続的に行使される地役権については、その行使を妨げる事実が生じた時から起算する旨が規定されています。
継続的に行使される地役権は、例えば、送電線が土地の空中を通っている地役権などがあります。送電線の地役権を空中権とも言います。

継続的でなく行使される地役権については、最後の行使の時から消滅時効が起算されます。
例えば、隣地の湧き水から必要なときに水を汲むことが認められる汲水(きゅうすい)地役権は、継続的でなく行使される地役権といえます。民法285条の用水地役権の一つとされます。

改正前の291条について

改正前の291条は、以下の内容でした。

第167条第2項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。


改正前の民法では、所有権以外の財産権に関する消滅時効についての規定が167条2項に規定されていたので、その点が改正後の291条と異なります。
改正点は、それだけであり、ごく形式的な改正になります。

改正後の292条について

改正後の292条は、以下の条文です。

要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。


292条も、地役権の消滅時効の規定であり、要役地が数人の共有の場合に関するものです。

要役地とは、地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものです(民法281条1項)。
つまり、地役権によって利益を受ける側の土地です。
その要役地が数人の共有の場合に、そのうちの一人に時効の完成猶予・時効の更新がある場合、他の共有者についても時効の完成猶予・時効の更新の効力を生じることが規定されています。
そのようにしないと、一つの土地について、共有者のなかに、地役権が時効で消滅している者と、消滅していない者が併存することになってしまい、それは地役権の不可分性(民法282条1項など)に反するからです。

改正前の292条について

改正前の292条は、以下の条文でした。

要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の中断又は停止があるときは、その中断又は停止は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。

今回の民法改正前は、時効の更新・時効の完成猶予のことを時効の中断・時効の停止と呼んでいたため、292条でもその点が異なっています。
それだけの改正点であり、内容面に変更はないことから、292条についても、ごく形式的な改正になります。

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