民法(債権法)改正の解説39 [民法158条、159条、160条] 時効の完成猶予

民法158条、159条、160条については、ほとんど改正されていませんが、ごくわずかな改正がされています。

以下、各条について解説していきます。

民法158条について

改正後の民法158条の条文は、以下のとおりです。

1 時効の期間の満了前6か月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6か月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から6か月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

改正前の民法158条も条文の内容は全く同一でした。見出し.jpg
そうすると、何が改正されたのかと思ってしまいますが、実は見出しが改正されています。
見出しとは、条文の冒頭にかっこ書きで記載された条文の要約です。
現在では、ほとんどの条文に見出しがあります。

ちなみに、改正前の158条の見出しは、(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)でした。
改正後の158条の見出しは、(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)です。

全く同一の内容について、改正前は、時効の停止とされていましたが、改正後は、時効の完成猶予にと呼び名が変わりました。
停止というと、そこで時効の進行がストップした状態が続くようですが、実はそうではなく、時効は進むものの時効の完成が一定期間猶予される状態だったことから、時効の完成猶予の方が誤解を招かず、ふさわしいということになったのです。

158条1項は、債権者である未成年者や成年被後見人に親権者や後見人などの法定代理人がいない場合に、時効の完成猶予や時効の更新の手続を行うことが期待できないため、法定代理人が就職してから6か月経過するまで時効の完成を猶予することにしたものです。

158条2項は、未成年者や成年被後見人が親権者や後見人という法定代理人を債務者とする債権を有していた場合に、これも時効の完成猶予や時効の更新の手続を行うことが困難なため、行為能力者となった時か後任の法定代理人が就職した時から6か月を経過するまで時効の完成猶予の効力を認めました。

民法159条について

改正後の民法159条は、以下の規定になっています。

夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

159条についても、改正前と改正後で条文の内容が全く同一です。

そして、見出しが変更されています。

改正前は、(夫婦間の権利の時効の停止)でした。
改正後は、(夫婦間の権利の時効の完成猶予)になりました。

158条と同様に、時効の停止から時効の完成猶予に変わったものです。

159条は、夫婦間の債権について、婚姻継続中に時効の更新や時効の完成猶予の手続をとることは期待できないことから、婚姻解消の時から6か月を経過するまで時効の完成を猶予したものです。

民法160条について

改正後の民法160条は、以下のとおりです。

相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6か月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

改正前の160条も、同一の条文となっています。

見出しが、改正前は(相続財産に関する時効の停止)だったところ、改正後は(相続財産に関する時効の完成猶予)に変更となっています。

相続財産に含まれる債権や債務について、相続人が確定していない状態や、相続人が不存在の場合には、相続の更新や相続の完成猶予の手続をとることが期待できません。
そこで、相続人が確定した時・相続財産管理人が選任された時・相続財産の破産手続開始決定があった時から6か月を経過するまでの間、時効の完成が猶予されることになりました。

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