相続法改正⑮ 配偶者居住権(2)

相続法改正で新設された配偶者居住権の概要を(1)で説明しました。居住権.jpg
引き続き、配偶者居住権について説明したいと思います。

改正後の民法1031条1項により、配偶者居住権が発生した場合、居住建物の所有者は、配偶者居住権が設定されている旨の登記を備えさせる義務を負います。
そして、同条2項により、配偶者居住権を第三者に対抗するためには、配偶者居住権の登記が必要とされています。
そうしないと、所有者から配偶者居住権を知らずに建物を購入した第三者が、不測の損害を被ることになるおそれがあるからです。

配偶者居住権を取得した配偶者は、建物の使用収益するにあたり、善良な管理者の注意義務を負います(改正後の民法1032条1項本文)。
ただし、従前居住していなかった部分を居住することもできます(同条1項ただし書き)。

配偶者居住権はあくまで配偶者にしか認められず、配偶者居住権を第三者に譲渡することはできません(同条2項)。
所有者の承諾がないかぎり、配偶者居住権を有する配偶者は、建物の改築・増築をすることはできず、第三者に使用収益させることはできません(同条3項)。

配偶者に善管注意義務違反があるとき、配偶者が無断で改築・増築したとき、無断で第三者に使用収益させたときには、所有者は、相当の期間を定めて是正の催告をすることができます(同条4項)。
その期間内に是正されないときは、所有者は配偶者居住権を消滅させる意思表示をすることがきます(同条4項)。

建物の修繕が必要になったとき、配偶者が修繕することができます(改正後の民法1033条1項)。
配偶者が相当期間に必要な修繕をしないとき、所有者が修繕することができます(同条2項)。所有者は、配偶者の無償使用を許容すればよく、修繕義務を負いません。
ただ、配偶者が修繕しないことで、所有者の知らないところで建物が朽廃することを防ぐため、配偶者は、修繕を要するのに修繕しないときは、所有者に修繕を要する旨を通知する義務があります(同条3項)。
また、建物に権利主張する者があるときも、配偶者は、所有者にその旨を通知する義務があります(同条3項)。

そして、配偶者は、建物の通常の必要費を負担します(改正後の民法1034条1項)。つまり、通常の修繕費は配偶者の負担になります。
特別の必要費、有益費については、建物所有者の負担となりますが、有益費は償還期限が猶予されることがあります(同条2項)。

配偶者居住権が消滅したとき、配偶者は建物を返還しなければならないのが原則です(改正後の民法1035条1項本文)。
ただし、配偶者が建物の共有持分を有するときは、配偶者居住権が消滅したというだけでは返還する必要がありません(同条1項ただし書き)。
配偶者が建物を返還する際、配偶者は、相続開始後に建物に付属させた物を収去する権利と義務があり、相続開始後に生じた損傷があるとき、通常損耗・経年変化を除いて原状回復義務を負います(同条2項)。

加えて、配偶者居住権に期間の定めがあったとき、期間満了で終了し、配偶者の死亡によっても消滅します(改正後の民法1036条、同597条1項、3項)。
配偶者居住権は、相続されないということです。

所有者が配偶者の不当な使用・収益による損害賠償請求をする場合、配偶者が支出した費用の償還請求をする場合、建物返還から1年以内に請求する必要があります(改正後の民法1036条、600条)。

配偶者が、所有者の承諾を得て、建物を第三者に使用収益させたときは、適法な転貸に関する改正後の民法613条が準用されます(改正後の民法1036条)。

建物が全部滅失する等して使用収益できなくなった場合は、配偶者居住権は消滅します(同条。改正後の民法616条の2)

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