民法(債権法)改正の解説25 [民法124条] 追認の要件

追認の要件について規定している民法124条が改正されています。

改正後の民法124条の条文は、以下のとおりです。

1 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
 一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
 二 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。

以下、改正後の民法124条1項と2項について解説したいと思います。

124条1項について

改正前の124条1項は、「追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。」という規定であり、改正後も基本的に踏襲されています。成人式.jpg

追認とは、瑕疵ある意思表示や制限行為能力者の行為のように取り消すことができる行為について、確定的に有効にする行為であり、後で取り消すことができなくなります。

そこで、改正前の段階で、錯誤による意思表示をした者が錯誤に気づいた後、詐欺の場合は詐欺に気づいた後、強迫の場合は強迫状態が終わった後、制限行為能力者については能力者になった後でなければ、有効な追認をすることができないとされていました。
それがつまり、「取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ」追認の効力を生じないという規定の意味です。

また、古い判例で、未成年者が成人後に追認したことが問題になった事例において、追認をするには、法律行為を取り消しうべきものであることを知り、かつ、取消権を放棄する意思があることを要するとしたものがあります。
未成年者が成人後に取り消すことができることを知らずに追認のような行動をとった場合について、安易に追認として確定的に有効にするのは、未成年者の保護に反することによるものだと思われます。

そこで、今回、取消権を有することを知った後に追認したことを要件として追加する改正を行うことになりました。

「取消権を有することを知った」といえるためには、正確な法的知識までは不要であり、法律行為の効力を否定する権利を有していることを知っていることが必要と思われます。

したがって、124条1項の改正については、既にある判例の明文化といえそうです。
ただし、かなり古い判例であり、全ての取り消すことができる行為の追認について明確な判例があったわけではないと思いますので、曖昧だった部分も含め、今回の改正で明確になったということだと思います。

それから、改正前の民法124条2項は、「成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。」という規定でした。
これは、成年被後見人が行為能力者になったときについて、その行為を了知した後でなければ有効な追認をすることができないという内容です。
この改正前の124条2項については、今回の124条1項の改正で、取消権を有することを知った後であることが追認の要件になったことにより、取消権を有することを知っていれば、当然その行為を了知していることから、重ねて規定する必要がなくなり、規定として削除されました。

改正後の民法124条2項1号について

改正後の民法124条2項1号は、改正前の民法124条3項を実質的に受け継いでいます。
改正前の民法124条3項は、「前二項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。」という規定です。
改正後の民法124条2項1号は、実質的に同一の内容となっています。

法定代理人、保佐人、補助人が追認をする場合は、制限行為能力者が行為能力者になるように取消しの原因となっていた状況が消滅していることは必要ないということです。
法定代理人には、親権者、後見人、未成年後見人等が含まれます。

改正後の民法124条2項2号について

改正後の民法124条2項2号は、全く新しい規定です。

改正前は規定がないため、①制限行為能力者が法定代理人・保佐人・補助人の同意を得て追認をすることができるか、②その場合に取消しの原因となっている状況が消滅していることが必要かについて、不明確な状態でした。

そこで、124条2項2号が新たに規定されました。
そして、新しい124条2項2号により、①制限行為能力者が法定代理人・保佐人・補助人の同意を得て追認をすることができること、②その場合に取消しの原因となっている状況が消滅していることは必要ないことが明記されました。

なお、成年被後見人は、除外されています。
成年被後見人は、後見人の同意を得たとしても有効な法律行為をすることができないからです。

経過措置について

経過措置に関する附則8条2項は、取り消すことができる行為が施行日(令和2年4月1日)より前にされた場合は、改正前の民法124条を適用することを規定しています。

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