保護責任者遺棄致死傷罪

保護責任者遺棄致死傷罪とは保護責任者遺棄罪または保護責任者不保護罪を犯し、よって人を死亡または傷害させた者に成立する犯罪です。
保護責任者遺棄致死傷罪の規定は、刑法219条にあります。
保護責任者遺棄致死傷罪の刑事罰については、同条において、「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」と規定されています。
この規定の意味は、保護責任者遺棄罪保護責任者不保護罪)の刑事罰(両罪とも同じです)と傷害罪または傷害致死罪の刑事罰を比較し、刑事罰の上限と下限について、重い方を本罪の刑事罰とするということです。

保護責任者遺棄罪の結果、人が傷害を負った場合である保護責任者遺棄致傷罪のときは、保護責任者遺棄罪傷害罪を比較します。
保護責任者遺棄罪の刑事罰は3月以上5年以下の懲役です。
これに対し、傷害罪の刑事罰は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
したがって、保護責任者遺棄致傷罪の刑事罰は、3月以上15年以下の懲役になるものと思われます。

保護責任者遺棄罪の結果、人が死亡した場合である保護責任者遺棄致死罪のときは、保護責任者遺棄罪傷害致死罪を比較します。
保護責任者遺棄罪の刑事罰は、上記のとおり3月以上5年以下の懲役であるのに対し、傷害致死罪の刑事罰は3年以上20年以下の懲役です。
よって、保護責任者遺棄致死罪の刑事罰は、傷害致死罪と同様の、3年以上20年以下の懲役ということになります。

保護責任者遺棄致死罪は、基本的な犯罪を犯した上で、重い結果が発生した場合に、基本的な犯罪より重い刑罰を科す犯罪である結果的加重犯です。

どのような場合に、保護責任者遺棄致死傷罪が成立するかについては、行為者が、保護責任者遺棄罪を犯した上で、傷害の故意はなかったにもかかわらず、被害者が傷害を負った場合です。
保護責任者遺棄罪を犯した者が、被害者に傷害を負わせることの故意があった場合は、包括して傷害罪一罪が成立するものと思われます。

行為者が、保護責任者遺棄罪を犯した上で、殺人の故意はなかったものの被害者 が死亡した場合に、遺棄致死罪が成立するものと思われます。
行為者が、殺人罪の故意があった場合には、基本的に殺人罪が成立するものと思われます。

  保護責任者遺棄致死罪が認められたものとして、以下のような裁判例があります。
①少女に覚せい剤の注射をし、少女が錯乱状態に陥ったにもかかわらず、救急車を呼ぶなどの措置をとらずに、少女を放置して立ち去り、少女が急性心不全で死亡した事例(最高裁決定平成元年12月15日)。
②やせ衰えて衰弱し、食べ物も受け付けず、歩くことも困難になっていた13歳の実子を保護せずに、餓死させた事例(大分地裁判決平成2年12月6日)。

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