免状等不実記載罪とは、公務員に対し虚偽の申立てをして、免状・鑑札・旅券に不実の記載をさせた者に成立する犯罪です。
免状等不実記載罪は、刑法157条2項に規定されています。
免状等不実記載罪の刑事罰は、1年以下の懲役または20万円以下の罰金です。
免状とは、特定の人に一定の行為を行う権利を付与するために発行する公務所・公務員の証明書のことです。
例えば、医師免許証、運転免許証が免状に該当します。
鑑札とは、公務所の許可や登録があることを証明するもので、公務所から交付を受けた者が、備え付けまたは携帯する義務があるもののことです。
例えば、質屋や古物商の許可証、飲食店営業許可証が鑑札に該当すると思われます。
旅券とは、外務大臣または領事館が発給する外国渡航許可証であり、いわゆるパスポートです。
これらのように、本罪では、国民(私人)が公務所に申請して発行を受ける証明書類等が対象となります。
これら証明書類等について、事実と異なる記載がなされることにより、証明書類等の信用性が害されることを防ぐために本罪が設けられたものと思われます。
これらの書類について、公務員に対し虚偽の申立てをして、公務員に不実の記載をさせることが実行行為です。
本罪における公務員とは、免状・鑑札・旅券に関する職務に就いている公務員のことと思われます。
虚偽の申立てとは、事実に反することを申告することです。
これにより不実の記載がなされることが必要です。
この点、自動車運転免許の更新申請の際に自己の住所について虚偽の内容を記載し、自己の本当の住所とは異なる住所が記載された運転免許証の交付を受けた者について、免状不実記載罪の成立を認めた判決(東京高裁判決平成4年1月13日)があります。
免状等不実記載罪は、刑法157条3項により、未遂も処罰されます。
ですから、免状等について虚偽の申立をしたところ、公務員が虚偽であることを見破り、不実の記載がなされなかったとしても、免状等不実記載罪の未遂犯として処罰されることになります。