民法(債権法)改正の解説69 [民法417条の2] 中間利息控除

中間利息控除を定める民法417条の2が本改正で新設されました。

条文

民法417条の2の条文は、以下のとおりです。

1 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

この新しい条文について、解説したいと思います。

中間利息控除

417条の2が規定しているのは、中間利息控除と言われるものです。手術ミス.jpg

中間利息控除とは、本来は将来に受け取る金銭を前払いしてもらうことになる場合に、今後発生するはずの利息分が差し引かれた上で支払われることです。

日常生活を過ごしていて中間利息控除が問題になることはなく、分かりにくい言葉だと思います。

例えば、医師の手術ミスで患者が下半身不随の障害で全く働けない状態になってしまった場合、患者は医師に対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができます。
その請求できる損害のなかに、本来は将来発生する損害があります。

将来得られたはずの収入が障害により得られなくなった損害を逸失利益と言います。この逸失利益は将来発生するであるはずの損害です。
また、将来に定期的な買い替えが必要となる介護ベッド代、職業介護者の介護費用も請求できる場合があります。これらも本来は将来にわたって継続的に発生する損害です。

他方で、このような損害賠償請求は、将来発生する損害も含めて全ての損害がまとめて一時金で支払われることが多いです。

そして、将来支払ってもらうよりも、今支払ってもらう方が、被害者にとっては得です。それは今もらって運用してその利息などで増やすことができるからです。

そこで、本当は将来発生する損害が現時点で一括して支払いとなる場合に、得する利息分をあらかじめ差し引いて支払われることにするのが、中間利息控除です。

この中間利息控除については、改正前の民法には規定がありませんでした。

ただ、判例で、上記のような将来発生する損害が一時金で支払われる場合については、年5%の法定利率による中間利息控除がされて支払われる損害が計算されるという運用が確定していました。

今回の民法改正での議論

今回の民法改正で、法定利率が初年度年3%に引き下げられ、その後は3年ごとの変動制がとられることになりました。

法制審議会の中間試案で、中間利息控除の場合には年5%を維持するという考えが示されましたが、被害者保護にそぐわないという批判が強くありました。
年5%と年3%では、年5%で計算した方が損害賠償額が低額になるからです。

そこで、中間利息控除においても、改正後の法定利率によって計算されることになり、そのことを明確化することになりました。
これによって417条の2が新設されたのです。

417条の2第1項

417条の2第1項では、「将来において取得すべき利益についての損害」、つまり逸失利益の賠償において、中間利息を控除するときは、「損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率」によって計算することが規定されています。

第1項では、損害のうち逸失利益の計算について規定しています。

そして、法定利率が変動制になっているところ、損害賠償請求権が生じた時点の法定利率によって計算をすることが規定されています。
手術ミスによる損害賠償請求の場合には、そのミスが発生した時点が、損害賠償請求権発生時になるのが一般的だと思われます。

中間利息控除の計算方法として、複利で計算するライプニッツ方式と単利で計算するホフマン方式という2種類の方法があります。
民法417条の2第1項は、どちらの方式によるかについては何ら規定していません。
被害者にとっては、単利のホフマン方式の方が控除される中間利息の金額が少なくなり、有利です。
しかし、実務上は、ほぼライプニッツ方式によっています。
おそらく改正後もライプニッツ方式による運用は変わらないと思います。 

また、第1項では、中間利息控除をする場合についての規定です。
そこで、将来にわたって定期的に支払われる定期金賠償の形によって請求し、これが認められれば中間利息控除がされないということは否定されていません。

ただし、定期金賠償の形での賠償を被害者側が請求したときでも、逸失利益について定期金賠償ではなく一時金賠償によるべきとした裁判例もあり、どのような場合に定期金賠償を認めるかについては判例が確定しているとはいえません。

417条の2第2項

第2項は、「将来において負担すべき費用」についての損害賠償の中間利息控除において、第1項と同じように、損害賠償請求権が生じた時点の法定利率によって計算することが規定されています。

第2項は、将来介護費などの将来の費用の場合です。

第1項と同様とする旨の規定であり、損害賠償請求権が生じた時点の法定利率によること、ライプニッツ方式かホフマン方式かについては規定していないこと、定期金賠償の形式により中間利息控除されない形で損害賠償請求することが可能であることは第1項と同様です。

そして、将来の介護費の場合には、定期金賠償の請求が認められやすいと言われています。

不法行為に準用されること

民法417条の2は、不法行為についての民法722条において、「不法行為の損害賠償について準用する」と規定されています。

したがって、交通事故などの不法行為の損害賠償で、逸失利益や将来介護費で中間利息控除がされる際、このときに損害賠償請求権発生時の法定利率により計算されることになります。
交通事故の場合は、事故時の法定利率による計算になります。

これによって、改正前より交通事故の被害者が受け取る損害額が多額になると思われ、実務上、重要な改正になります。

経過措置

附則17条2項において、施行日である令和2年4月1日より前に損害賠償請求権が生じた場合には、改正後の417条の2は適用しないと規定されています。その場合は、これまでどおり、年5%による中間利息控除になると思います。

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