民法(債権法)改正の解説96 [民法429条] 不可分債権者の1人との間の更改・免除

不可分債権者の1人との間の更改・免除について規定している民法429条が改正されています。

改正前と改正後の条文

改正前の民法429条は、以下のとおりでした。

1 不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない。
2 前項に規定する場合のほか、不可分債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の不可分債権者に対して効力を生じない。

改正後の民法429条は、以下のとおりです。

不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない。

改正された箇所

上記の条文のとおり、改正による変更点は、2項が削除されたことです。
1項は、そのまま残っています。

2項が削除された理由としては、民法428条において準用されている435条の2が、改正前の429条2項と内容的に重複するからです。
435条の2により、不可分債権者の1人の行為または1人について生じた事由は、他の不可分債権者に対してその効力を生じないという原則が規定されています。
したがって、改正前の429条2項は不要になったとされています。

429条の意味

残った429条の規定を説明すると、以下のとおりです。

まず、用語の説明が必要な点として、更改とは、①債権の内容について重要な変更をする場合、②債務者の交替、③債権者の交替によって従前の債権が消滅して新しい債権が発生することです。あまり実際の取引で使われることは少ないといえます。ただし、企業の組織再編等で使われることがあるとされています。

次に、免除とは、債権者が一方的な意思表示で債権を無償で消滅させることです。

民法429条は、不可分債権者の1人が債務者に対して更改や免除をした場合に、他の不可分債権者にどのような影響が生じるかについて規定しています。

これによれば、他の不可分債権者は、債務者に対して債務の全部の履行を請求することができます
ただし、免除や更改をした左府可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければなりません

例えば、不可分債権者A、B、Cが共同で別荘を3000万円で購入したところ、Aだけが代金は負担するが別荘は要らないとして売主Dに対して債務免除をした場合、BとCはDに対して別荘全部を引き渡すよう請求できますが、Aの取り分が3分の1だとした場合には1000万円をB、CがDに償還しなければならないことになると思われます。
かなり特殊な状況ですので、実際にはAが誰にどのような意思を表示したかについては、慎重な認定が必要だと思われます。

経過規定

施行日である令和2年4月1日以降に生じた不可分債権について、改正後の民法429条が適用されます。

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