民法(債権法)改正の解説92 [民法425条の3]受益者の債権の回復

債権法改正で、債務者が自己の債務を消滅させた行為について詐害行為取消しが認められたとき、受益者の債務者に対する債権が復活する旨を規定する民法425条の3が追加されています。

民法425条の3の規定

民法425条の3は、以下のとおりです。

債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。

民法425条の3が想定している事例

民法425条の3は、以下のような事例を想定しています。

債務者Aが全財産が預金1000万円であり、債権者Bと債権者Cに各1000万円の金銭債務を負っていたところ、債権者Bだけに全財産を使って1000万円を支払った後、債権者Cが詐害行為取消しの訴訟を起こし、債務者Aと債権者Bの通謀して他の債権者を害する意図が認められて、詐害行為取消しが認められて、債権者Bは1000万円を返還した事例です。
債権者Bのことを受益者といいます。

この場合に、債権者Bが元々有していた債務者Aに対する1000万円の金銭債権は復活するかどうかを民法425条の3が規定しています。

民法改正前の状況

状況的には、Bが1000万円を返金した場合には、元々のAへの債権が復活しないと、Bにとって不公平であるといえます。

民法改正前の時点では、民法425条の3のような規定がなく、また判例は、詐害行為取消しの効果が取消しを請求した債権者と受益者との間だけに生じ、債務者には及ばないとしていたため、Bの元々のAへの債権の復活を説明することが困難な状況でした。
ただし、古い判例は、受益者が代物弁済を受けていたのが詐害行為取消しになった事例で、受益者の元々の債権が復活するという結論を述べていたものがありました。

このような不整合を解決する必要が民法改正の際に議論されました。

民法改正後の状況

民法425条の3の新設により、上記のような事例で、詐害行為取消しによって1000万円を返金した受益者Bが債務者Aに対して有していた元々の債権が復活することが明記されました。

なお、債務の消滅に関する行為が取り消される場合でも、民法424条の4で過大な部分の代物弁済が取り消されたときには、受益者の元々の債権を復活させる必要性は全くないことから、本条の適用はないことが括弧書きで規定されています。

経過規定

民法425条の3は、改正民法の施行日令和2年4月1日以降に詐害行為が行われた場合に適用されます。

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