民法(債権法)改正の解説78 [民法423条の5] 債務者の取立て・債務者への履行

今回の改正において、債権者代位権が行使された場合の債務者の取立て・債務者への履行等について規定する民法423条の5が新設されています。

民法423条の5について

民法423条の5の条文は、以下のとおりです。

債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。

この条文は、前段と後段の2つに分けることができます。

以下において、解説していきます。

423条の5前段について

民法423条の5前段が規定しているのは、債権者代位権が行使された後に、債務者がその権利を自ら行使できるかという点です。

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例えば、債権者Aが債務者Bの第三債務者Cに対する貸金返還請求権を代位行使した後に、債務者Bが第三債務者Cに貸金返還請求をすることが認められるかが問題となります。

この点について、改正前には明確な規定がなかったところ、判例は、債権者が債権者代位権を行使した後、債権者が債務者に債権者代位権の行使を通知した場合や、債務者が債権者代位権の行使を何らかによって知った場合は、債務者は第三債務者への取立て等の処分をすることはできないと解釈されていました。
しかも、債権者代位権の行使は、裁判上のものでなく、裁判外のものでも、債務者自身の取立てが禁止されることが認められていました。

これに対し、債権者代位権の行使により債務者自身が取立てを禁止されるのは債務者の財産管理に対する過剰の介入ではないかなどの批判がありました。

また、債権者代位権による事実上の優先弁済を消極的に考える見解から、債権者代位権の強い効力を弱める方向での改正が検討されました。

そして、今回の改正において、判例の解釈を変更し、新設の民法423条の5前段において、債権者代位権の行使後も、債務者は自ら取立て等の処分をすることができることになりました。

423条の5後段について

民法423条の5後段は、債権者代位権の行使を受けた第三債務者(相手方)が債権者ではなく債務者に履行することができるかを規定しています。

この点について、改正前は明確な規定がありませんでした。

また、最高裁判決はなく、東京高裁の判決で、第三債務者は債務者に履行することが禁止されると判示したものがありました。

この判決によると、第三債務者は誰に支払うべきか、債権者代位権の行使が有効であるかについて、正確な調査をしなければならない立場になり、判断を誤ると、支払が無効になったり、債務不履行になったりするおそれがあり、過大な負担がかかるという批判がありました。

また、本条前段で、債権者代位権行使後も、債務者が取立て等をすることができることからすれば、その裏返しで、第三債務者が債務者に履行することが認められるべきです。

そこで、423条の5後段で、第三債務者(相手方)が債務者に対して履行することが認められました。

ルールが変更になること

以上のように、423条の5は、これまでの判例のルールを変更するものです。

わざわざ債権者代位権を行使しようとする者にとっては、423条の5により、債務者が取立てをしたり、第三債務者が債務者に支払ったりするおそれが出てくることから、債権者代位権を躊躇する事情になります。

そのようなおそれを避けるために、債務者の第三債務者に対する権利を仮差押えすることが考えられます。
仮差押えによって、債務者は取立て等をすることができず、第三債務者は債務者に支払うことができなくなります。

ただし、仮差押えがされた場合、第三債務者は供託することができ、そうすると債権者代位権を行使した債権者が事実上の優先弁済を受けることはできなくなります。

今回の改正は、このようにして債権者代位権の事実上の優先弁済という強い効力を減殺することを狙ったものといえます。

経過措置

改正附則18条1項により、施行日の令和2年4月1日以前に債務者に属する権利(被代位権利)が生じた場合は、改正前の民法が適用され、改正後の民法は適用されません。

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