民法(債権法)改正の解説71 [民法419条] 金銭債務の債務不履行

金銭債務の債務不履行について規定している民法419条が、少しですが改正されています。

条文

改正前の民法419条の条文は、以下のとおりです。

1 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。


改正後の民法419条の条文は、以下のとおりです。

1 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。


今回の改正において、419条2項と3項は変更ありません。
改正の対象は、419条1項です。

以下、解説します。

金銭債務の債務不履行

419条は、金銭債務の債務不履行があった場合の損害賠償について規定しています。

金銭債務については支払期限内に支払わないと、履行遅滞の債務不履行になります。
金銭債務は、金銭を入手することが不可能になることはなく、履行不能は考えられないとされています。

419条1項について

金銭債務の債務不履行になった場合、債権者は債務者に対し損害賠償を請求することができるところ、その損害は原則として法定利率によって遅延損害金を計算します(419条1項本文)。

ただし、約定利率がが法定利率を超える場合は、約定利率によって遅延損害金を計算します(419条1項ただし書き)。

取引上、利息とは別に、遅延損害金の利率がより高額に設定されていることがあります。
これは、民法420条の賠償額の予定になります。

419条2項について

金銭債務の債務不履行に基づいて損害賠償請求をする場合に、債権者は損害の証明をする必要がありません(419条2項)。

これに関して、債権者が法定利率を超える損害を被ったことを理由に、法定利率を超える損害賠償請求をすることができるかが問題となった裁判があります。
最高裁は、債権者が法定利率を超える損害を被ったことを立証しても、法定利率の損害賠償を請求することはできないとしました。
民法改正の法制審議会において、債権者が法定利率を超える損害を被ったことを立証した場合は、法定利率を超える損害賠償を請求できることに改正することが議論されましたが、そのような改正は見送られました。

なお、金銭債務の不履行による損害賠償請求で法定利率を超える賠償を認める規定があります(民法647条、665条、669条、671条)。このような規定がある場合は例外的に法定利率を超える損害賠償が可能です。

419条3項について

金銭債務の債務者は、不可抗力があっても損害賠償を免れることができません(419条3項)。

大災害.jpg

これに対し、今回の民法改正の法制審議会で、東日本大震災などの大災害の不可抗力による遅延損害金の免責を認めるために、419条3項の削除が中間試案として示されました。
しかし、反対意見があり、419条3項の削除は見送られました。

したがって、金銭債務については不可抗力があっても期限内に支払えなければ遅延損害金を支払われなけばならないことになります。

大災害の場合の特別立法などで遅延損害金の支払を免除するような規定が設けられれば別です。 

改正点

今回の改正点は、419条1項で、「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における」法定利率によって定めるという記載が加わったことです。

これは、民法404条の改正により、法定利率が改正後年3%とされ、その後3年ごとに変動することになったことの影響によるものです。

結果として、履行遅滞となった最初の時点の法定利率によって計算されることになりました。

ただ、改正の法制審議会の議論においては、法定利率の変動に合わせて金銭債務の不履行による遅延利息の利率も変動することが提案されていました。
これに対し、計算が複雑になる等の反対意見があったため、上記のように遅滞となった時点の法定利率で固定されることになりました。

経過措置

改正附則17条3項により、施行日の令和2年4月1日より前に債務者が履行遅滞となった場合、遅延損害金の法定利率は改正前の民法の適用を受けるものとされ、年5%になります。 

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