民法(債権法)改正の解説61 [民法412条] 期限と遅滞時期

期限と遅滞時期について定めた民法412条が改正されています。

改正後の412条は、以下のとおりです。

1 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。
3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。


この412条は、債務の履行に期限がある場合(ない場合)に、債務者がいつから履行遅滞の責任を負うかを規定したものです。
期限の有無・内容に応じて、分けられています。

確定期限がある場合(民法412条1項)

確定期限とは、到来する時期が確定している期限のことです。

例えば、令和2年5月4日のように日付で期限を定めるのは、確定期限です。

確定期限がある場合には、その期限の到来した時から、債務者は遅滞の責任を負います(民法412条1項)。

例えば、令和2年5月4日が期限の場合には、5月4日24時、つまり5月5日0時になった時点で、債務を履行していないと、履行遅滞の債務不履行責任を負うことになります。

この民法412条1項については、改正前と改正後で規定の変更はありません。

不確定期限がある場合(民法412条2項)

不確定期限とは、将来発生することは確実だが、その時期が不確定な期限です。開花.jpg

例えば、次に東京で桜の開花宣言が出た時、三浦知良選手がサッカー選手を引退した時、弁護士中澤智憲が死亡した時、というのは不確定期限です。

また、出世したときに借金を払うという出世払いは、古い判例で、不確定期限とされています。
出世できないことが確定した時点で、支払わなければならないという解釈がされています。

不確定期限の場合には、債務者が期限到来後に履行の請求を受けた時、債務者が期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から履行遅滞になると規定されています(民法412条2項)。

不確定期限は、期限の到来がはっきりしない場合があるので、確定期限のように客観的に期限が到来しただけでは遅滞の責任は生じません。
客観的に期限が到来したことに加えて、債務者がそれを知ったか、債務者が履行の請求を受けたことが必要とされているのです。

改正前の412条2項

これに対し、改正前の民法412条2項は、以下の規定でした。

2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から履帯の責任を負う。


このように、債務者が期限の到来を知った時から遅滞の責任を負うとだけ規定され、履行の請求を受けた場合については規定されていませんでした。

通常は、履行の請求を受ければ、同時に期限が到来したことを知らされると思いますので、あまり変わらなそうです。
ただ、単に請求だけなされただけの場合には、まだ期限の到来を知らないという抗弁をする余地がありました。

他方で、412条3項では、単に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うことになっていたことの均衡に問題があるという批判がありました。

そこで、今回の改正で、期限到来後に履行の請求を受けた時にも遅滞の責任が生じることが追加されることになりました。

期限を定めなかったとき(民法412条3項)

期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負います。

親族や友人間での貸金では、期限を定めない場合がよくあります。

このような場合は、いつまでも返さなくて良いということにはもちろんならず、債務者が履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負います。

この規定については、改正の対象になっていません。

経過規定(412条2項について)

改正されている412条2項については、施行日である令和2年4月1日より前に債務が生じた場合、同日以降に債務が生じた場合でもその原因となる法律行為が施行日前にされた場合には、改正前の規定の適用を受けます。

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