民法(債権法)改正の解説57 [民法398条の7] 根抵当権の被担保債権の譲渡等

今回の改正で、根抵当権の被担保債権の譲渡等を規定している民法398条の7が改正されています。

改正後の条文

改正後の民法398条の7は、以下の規定です。

1 元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。
2 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない。
3 元本の確定前に免責的債務引受があった場合における債権者は、第472条の4第1項の規定にかかわらず、根抵当権を引受人が負担する債務に移すことができない。
4 元本の確定前に債権者の交替による更改があった場合における更改前の債権者は、第518条1項の規定にかかわらず、根抵当権を更改後の債務に移すことができない。元本の確定前に債務者の交替による更改があった場合における債権者も、同様とする。


この398条の7は、元本確定前の根抵当権には随伴性がないことを意味しています。

随伴性とは、被担保債権が債権譲渡等で移転した場合に、その債権の担保物権が付いていき一緒に移転することです。

例えば、XがYに1000万円の貸金債権を有しており、その債権にY所有のA土地の抵当権が付いていたところ、Xが債権をZに譲渡した場合、A土地の抵当権もZに移転します。
これが随伴性です。
通常の抵当権を含む多くの担保物件には随伴性があります。

随伴性がない理由

これに対し、元本確定前の根抵当権については、随伴性がありません。随伴性.jpg

例えば、UがVに1000万円の貸金債権と2000万円の貸金債権の2口の債権を有しており、V所有のB土地にUの貸金債権についての根抵当権が設定されていたところ、Uが元本確定前にWへ1000万円の貸金債権を譲渡した場合、WはB土地の根抵当権を取得することができません。

根抵当権は、元本確定時の根抵当権者と債務者との債権を担保するものであり、その前に債権者が変わってしまった場合、担保から外れることになります。
そのようにしないと、法律関係が複雑になってしまうからと言われています。

そして、398条の7は、①債権譲渡の場合(1項前段)、②代位弁済の場合(1項後段)、③債務引受の場合(2項)、④免責的債務引受の場合(3項)、⑤債権者の交替による更改の場合(4項前段)、⑥債務者の交替による更改の場合(4項後段)のいずれについても、根抵当権の対象外になってしまうことを規定しています。

改正された部分

改正前と全く変わっていないのは、398条の7第1項と第2項です。

398条の7第3項は、今回の民法改正で、全く新しい内容の規定となっています。
今回の改正で、新しく設けられた免責的債務引受に関するものだからです。

改正後の472条の4において、免責的債務引受の場合に、債権者が元々の債務の担保権を引受人が負担する債務に移すことができると規定されていますが、398条の7第3項により確定前の根抵当権では否定されています。

398条の7第4項は、実質的内容に変更はなく、若干の表現が変更されているものです。

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