民法(債権法)改正の解説41 [民法166条1項] 債権の消滅時効期間

民法166条1項について

債権の消滅時効期間について規定している民法166条1項が改正されています。
民法166条1項の改正は、時効についての重要な改正の一つです。

改正後の民法166条1項は、以下の規定です。

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

以下において解説いたします。

改正前の債権の消滅時効期間

改正前は、債権の消滅時効について、原則の時効期間を10年とし、例外の短期消滅時効の制度を設け、職業別に1年、2年、3年の短期消滅時効を設定していました。
また、商法上、商事消滅時効が5年とされていました。

実務上10年の時効期間が適用されるものは限定されており、また職業別の短期消滅時効の合理性に疑問が呈されるなどにより改正の必要性が認識されるようになりました。
近年、諸外国でも、原則的な消滅時効期間の短縮化の傾向がありました。

改正点

166条1項の改正点は、以下のとおりです。債権の時効.jpg

債権の時効期間について、これまで認められていた「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。」(2号)に加えて、新たに「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。」(1号)による消滅時効期間が加わったものです。
いずれか一方の時効完成により、債権が消滅することになります。

新たに、5年の消滅時効が認められたのは、原則的な時効期間の短縮化の要請、職業別の短期消滅時効の廃止に代わる制度の要請などによるものです。

一方、時効期間を単純に短くすべきではない権利として、過払い金などの不当利得返還請求権や、安全配慮義務違反に基づく生命・身体の損害などの損害賠償請求権があります。
これらの債権は、そもそも債権者が債権の存在や債権行使が可能であることを知るのに時間がかかりがちなものです。
したがって、これらの権利も、一律に5年の時効期間とすることには抵抗がありました。

そこで、5年の時効については、「債権者が権利を行使することができることを知った時」から時効期間が進行することになりました。
これにより、権利の存在や権利行使が可能であることを知らずに時間が経過してしまった債権者を保護することができます。

他方で、一般的な契約に基づく債権については、通常弁済期の到来から5年間の経過により時効成立することになります。

これに伴い、5年の商事消滅時効と職業別の短期消滅時効は廃止されることになりました。

改正による注意点

今回の166条1項の改正で最も注意する必要があるのは、これまで商事消滅時効が適用されなければ、原則10年の時効期間だったものが、5年の時効期間へ短縮になる場合があることです。

一般人同士のお金の貸し借りは、これまで10年の時効期間でしたが、原則5年の時効期間になります。

権利を行使することができることを知った時とは

重要なのは、5年の時効の起算点である「権利を行使することができることを知った時」とは、どのような時点を指すかです。

一般的な契約上の権利であれば、「権利を行使することができる時」と同じになると思います。
したがって、弁済期、支払期限が決まっていれば、その期限が到来した時点から時効が開始します。

問題は、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権や不当利得返還請求権の場合です。

債権発生の原因及び債務者を知り、一般人であれば安全配慮義務違反で債務不履行になっていると判断するに足りる事実の認識が必要であるとする見解があります。
「権利を行使することができることを知った時」という概念は今回の改正で新たに規定されたものですので、今後の判例の集積が待たれます。

改正前の166条1項

改正前の166条1項は、「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」という規定でした。
債権の消滅時効期間については、改正前の167条1項で、「債権は、10年間行使しないときは、消滅する。」という規定でした。
この2つの規定が合わさり、内容的に追加されているのが改正後の166条1項といえます。

経過規定

施行日(令和2年4月1日)前に債権が生じた場合の消滅時効期間は、改正前の規定が適用されます。

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