民法(債権法)改正の解説29 裁判上の請求等による時効の完成猶予・更新 民法147条

民法147条について

民法147条が改正されています。

改正後の147条は、以下のとおりの規定となっています。

1 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6か月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
 一 裁判状の請求
 二 支払督促
 三 民事訴訟法275条1項の和解又は民事調停法若しくは家事事件手続法による調停
 四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。


この民法147条以下については、重要な改正がされています。
以下において詳しく解説いたします。

改正前の147条、時効の中断・停止

改正前の147条は、以下のように規定していました。

時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
二 差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認


改正前の民法では、この147条以下で、時効の中断について規定していました。
時効の中断とは、一定の事由が生じた場合に、時効期間の進行が中断し、これまで進行した時効期間がゼロに戻ることとされていました。

他に、改正前の民法158条~161条において、時効の停止に関する規定がありました。
時効の停止とは、一定の客観的事実によって時効の進行を停止させ、一定の間は時効の完成が猶予されるものです。

このように、改正前の民法は、時効の中断・停止を規定していました。

時効の完成猶予・更新への再構成

改正法では、時効の中断・停止という制度を取り止め、時効の完成猶予・更新という制度に再構成しました。時効期間.jpg

なぜなら、改正前の民法では、時効の中断事由である裁判上の請求について、訴え提起の時点で時効中断の効力が生じるとされ、請求認容判決が確定した場合にその時点よりゼロから時効期間が進行するが(改正前の157条)、訴えの却下・請求の取下げになった場合は時効中断の効力が生じなかったことになる(改正前の149条)という規定になっていました。
また、裁判例で、訴えの却下・請求の取下げになったものの、訴えを提起している以上、催告の意味を持つから、取下げから6か月以内に別の時効中断事由が生じれば時効中断とする法律効果を認めたものがありました。これを裁判上の催告と言われていました。

以上のように、時効の中断事由である裁判上の請求について、裁判を起こした時点の効果(一時的に時効の完成が猶予される)と勝訴判決になった時点の効果(それまでの時効期間がリセットされゼロから進行を開始する)があることや、裁判上の催告という条文に明記されていない法律効果があること、時効の中断・停止という名称についても実際の効果と齟齬があることなどが指摘され、分かりにくい等の批判がありました。

そこで、一定の事由発生により、本来の時効期間の満了時期を過ぎても、所定の時期を経過するまでは時効が完成しない効果が生じるものを時効の完成猶予としました。
時効の完成猶予は、所定の時期を経過するまでは時効が完成しないものの、時効期間の進行そのものが止まるわけではありません。
例えば、所定の時期経過前に一応時効期間満了となった場合には、所定の時期経過時に時効完成となります。
所定の時期経過してもまだ時効期間満了になっていない場合には、その後に時効期間満了した時点で時効完成となります。

他方、一定の事由発生により、これまで経過した時効期間が無意味となり、新たにゼロから時効期間が進行するという効果が生じるものを時効の更新としました。

改正後の147条1項について

改正後の147条1項は、①裁判上の請求、②支払督促、③訴え提起前の和解・民事調停・家事調停、④破産手続参加・再生手続参加・更生手続参加について、時効の完成猶予の効果が生じることを規定しました。

そして、その事由が終了するまでの間、時効が完成しない旨が規定されました。
裁判上の請求であれば、裁判手続が終了するまでは、時効が完成しないということです。

また、確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定せずに事由が終了した場合には、その終了の時から6か月を経過するまでの間、時効が完成しないこともかっこ書きで規定されています。
裁判上の請求をした場合に、訴えを取り下げて裁判が終了したときには、その裁判終了時から6か月を経過しないかぎり、時効が完成しないことになります。

改正後の147条2項について

改正後の147条2項では、1項で規定された各事由の①裁判上の請求、②支払督促、③訴え提起前の和解・民事調停・家事調停、④破産手続参加・再生手続参加・更生手続参加について、確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効の更新の効果が生じることが規定されました。
つまり、それまで経過した時効期間がゼロになり、各事由が終了した時点から新たに時効期間が進行を始めることになりました。

改正前後での変化

改正後の147条の規定は、その言葉、論理に変更がありますが、形式的な変更に止まり、実質的な結論は改正前と変わらないと思われます。
改正後の147条が定める各事由は、改正前の147条1号の「請求」に含まれるものと解釈されていたものです。

経過措置

施行日前に改正前の147条に規定する時効の中断の事由が生じた場合には、改正前の民法が適用されます。

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