訴えの利益

訴えの利益とは、裁判制度を利用することがsaiban_small.png
当事者間の紛争の解決にとって必要で適切といえることであり、これが無ければ請求内容の当否に関する判決(本案判決)がなされず、訴えが不適法として却下されてしまうことをいいます。

つまり、訴えの利益は、訴訟要件の一つです。

訴えの利益という概念そのものについて、民事訴訟法上の規定はありませんが、訴えの利益が訴訟要件として必要であることは、一般的に認められています。
訴えの利益が必要である理由の説明は、以下のようなものです。
民事訴訟は、当事者間の紛争解決のためのものであるところ、判決によって紛争を解決することが期待できない場合には、裁判所が判決をしても無意味です。そのような場合にも裁判所が審理の上で判決をすることになれば、裁判所の手間、被告の労力などが無駄になります。そこで、そのような無駄なことをせず、本当に必要な裁判を選別するために必要なのが訴えの利益です。

訴えの利益については、大きく2種類に分けられると言われています。
権利保護の資格は、請求が本案判決の対象となりうるかどうかの問題です。
権利保護の利益は、当該事件の具体的事実関係を考慮して、原告の請求について本案判決をすることが紛争解決に適するかどうかの問題です。これを狭義の訴えの利益といいます。
また、権利保護の利益については、当該権利関係の客観的性質の面、訴訟物と当事者との間の主観的関係の面という2つの面が問題になりますが、後者は当事者適格として問題になります。

権利保護の資格について
権利保護の資格は、当該訴訟における具体的事情とかかわりなく、一般論として請求の内容が本案判決の対象となりうるかどうかの問題とされます。
条文としては、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に該当するかどうかという点で具体的に問題とされます(これに該当しなければ、裁判所の審判権の範囲外になってしまいます)。
学説・判例上、ⅰ訴訟物が当事者間の具体的権利義務・法律関係とみなされること、ⅱ訴訟物についての攻撃防御方法が法令の適用に適することという2つの基準によって判断されています。
ⅰについては、例えば、当事者の具体的権利と関係なく抽象的な法令の違憲・無効の確認を求める訴え(最高裁判決昭和27年10月8日)、住職の地位等宗教上の地位の確認を求める訴え(最高裁判決昭和44年7月10日)が「法律上の争訟」に該当しないものとされました。ですので、「神」が存在することの確認を求める裁判というのは認められません。
なお、宗教上の地位を前提としても、宗教法人の代表役員の地位等法律上の地位の確認を求める訴えは、ⅰの基準を満たします。単なる事実の存否の争いは、ⅰの基準に抵触します(例外的に認められるものとして、民事訴訟法134条の証書真否確認訴訟があります)。 
ⅱについては、例えば、法律上の地位を判断するにあたり、宗教上の教義の解釈に関する判断をしなければならない場合、ⅱの基準に抵触することになる。

権利保護の利益について
上記のとおり、具体的事実関係を考慮して、判決が紛争解決に適するかどうかの問題です。
訴えの3類型(給付の訴え、確認の訴え、形成の訴え)に共通するものとそれぞれに固有のものとがあります。

いずれの訴えの類型にも共通するものとしては、以下のものがあります。
ⅰ訴え提起の必要性
 請求について本案判決を得る必要性のことです。既に同じ請求について、勝訴判決を得ている場合、必要性が認められません。
ⅱ訴え提起の許容性
 法律上、本案判決を求めることが禁止されている場合です。
 例えば、既に本案判決を求める機会が与えられている場合があります。民事訴訟法142条の二重起訴の禁止、民事訴訟法262条2項の再訴の禁止、人事訴訟法25条の再訴の禁止などです。
 また、実体的権利関係以外の訴訟法上の権利関係について、特別の手続を要求される場合もこれに該当します。民事訴訟法71条の訴訟費用償還請求権の額の確定がそうです。それから、訴訟代理権の存否は当該訴訟のなかで判断すべきであり、別個に確認訴訟を提起することはできないという判決(最高裁判決昭和30年5月20日)があります。
ⅲその他
 当事者間で不起訴の合意や仲裁契約が存在する場合なども訴え提起の許容性が認められません。

各類型に固有の権利保護の利益は、以下のとおりです。
給付の訴えについて
 現在の給付の訴えの場合(履行期が口頭弁論終結時に到来している)、訴えの利益があることについて問題がありません。それは、給付請求権の内容として、裁判により履行を求める権能が含まれているからです。
 将来の給付の訴えの場合(履行期が口頭弁論終結時に到来していない)、「あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる」(民事訴訟法135条)とされます。なぜなら、履行期が到来していない場合に判決を求めることを認めるには、それを正当化する利益が原告に存在していなければならないからです。「あらかじめその請求をする必要」については、2類型に分けられます。
 履行期が到来してもその履行が合理的に期待できない事情が存在する場合です。例えば、被告が義務の存在を争っている場合です。それから、基本となる権利関係が争われている場合の派生的給付(家屋明渡訴訟における明渡し済みまでの賃料相当損害金、履行不能を条件とする代償請求など)もこれに該当します。
 次の類型として、履行期の到来時において即時の給付がなされないと、債務の本旨に反する、又は原告が著しい損害を蒙る場合が挙げられます。例えば、定期行為(民法542条)、演奏会の演奏、扶養料の請求などです。なお、公害訴訟における継続的不法行為に対する損害賠償請求における将来部分については、判例(最高裁判決昭和56年12月16日)で否定されています。
確認の訴えについて
 確認の対象となりうるものは論理的には無限定であることから、訴えの利益により限定する必要が大きいと言われます。学説上、複雑な議論がされています。学説によって表現などが異なりますので、一つの有力な見解を紹介します。
 確認の対象が、権利保護の資格として問題になります。そして、確認の対象となりうるのは、原則として、権利関係に限ります。つまり、事実関係や権利関係以外の社会関係は、確認の対象にならないのが原則です。例外として、証書真否確認訴訟(民事訴訟法134条)、国籍訴訟(最高裁判決昭和32年7月20日は、現在日本国籍を有することに争いのない場合、国籍取得が国籍回復許可によるものでなく日本人を父として出生したことによると主張する者はその旨の確認を求める法律上の利益があるとされました)等があります。
 次に、確認の利益が、権利保護の利益として問題になります。
 まず、権利関係の基準時の問題があります。一般に、現在(口頭弁論終結時)の権利関係でなければならないとされます。過去の権利関係の確認が、かえって現在の権利関係をめぐる紛争の解決にとって適切である場合、確認の利益を認められます。株主総会決議無効確認の訴え(会社法830条)や、遺言無効確認の訴えなどが認められています。
 さらに、即時確定の利益が問題となります。これは、当事者間の具体的事情を考慮して、紛争解決のために確認判決が必要であり、かつ、確認判決が紛争解決にとって適切であることです。必要性の面では、被告が訴訟物たる権利関係の存否を争っている場合、時効中断の必要、戸籍の記載変更の必要がある場合などに認められます。適切性の面では、将来の権利関係の確認はできない、積極的確認と消極的確認の双方が可能なときは積極的確認をすべき、形成権や請求権の存在確認訴訟はできないといわれます。
形成の訴えについて
 法律上、要件等が個別に定められているから、それらの規定に基づいて訴えが提起されていれば、原則として訴えの利益が認められます。
 ただし、事情の変化によって、訴えの利益が否定されることがあり、その場合、原告が過去の権利関係の変動を求めることについて法律上の利益が必要とされます。
 例えば、ある取締役を選任した株主総会決議取消の訴えの訴訟中に、その取締役が任期満了により退任した場合には、形成の訴えが認められた場合と同じ効果が生じていることから、最高裁判決昭和45年4月2日は、特別の事情がない限り訴えの利益が認められないと判示しました。

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