偽造通貨行使罪

偽造通貨行使罪とは、偽造・変造の貨幣・紙幣・銀行券を行使し、または行使の目的で人に交付し、もしくは輸入する犯罪です。

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偽造通貨行使罪については、刑法148条2項に規定があります。
偽造通貨行使罪の刑罰は、無期懲役または3年以上の懲役(20年以下)です。

本罪の対象となっている物は、偽造・変造の貨幣・紙幣・銀行券です。
貨幣・紙幣・銀行券については、通貨偽造罪・通貨変造罪において、詳しく説明しておりますので、ご覧いただけたらと思います。
いわゆる通貨とも言われますが、簡単に言えば、現金・お金のことです。
そして、偽造・変造された通貨が問題になりますが、自分で偽造・変造したものである必要はなく、また誰が偽造・変造したものであろうと、本罪の対象になります。
加えて、通貨偽造罪・通貨変造罪では、偽造・変造した者が行使の目的(流通に置く目的)を有していることが必要ですが、偽造通貨行使罪では、行使の目的を有していなかった者が偽造・変造した場合でも、本罪の対象になります。

本罪の実行行為は、①行使、②交付、③輸入の3種類あります。

行使とは、真正な通貨として流通に置くことです。
典型的には、偽造の通貨を使って買い物することです。偽造の通貨を本物と偽って贈与することも、行使に該当します。つまり、対価を得ることは必要ではありません。
自動販売機で使用することについて、反対説はありますが、行使に該当するという見解が多数であり、偽造通貨行使罪を認めた裁判例(東京高裁判決昭和53年3月22日)があります。
適法に使用することも要件ではないので、賭け事や売春で使用した場合も、行使に該当します。

交付とは、偽造・変造の通貨であることを告げて、または偽造・変造の通貨であることを知っている者に対して、手渡すことです。
偽造・変造の通貨であることを告げず、偽造・変造の通貨であることを知らない者に対して手渡すことは、交付ではなく、行使に該当すると思われます。
交付は、行使の目的が必要です。したがって、教材としての目的だけで交付した場合には、犯罪になりません。
行使の目的は、手渡した相手方や別の者が行使することを目的としているのでも構いません。

輸入とは、国外から国内に搬入することです。
ただ領海、領空内に入っただけでは足りず、陸揚げや荷下ろしがされたことが必要とするのが多数説です。
輸入についても、行使の目的が必要です。

偽造通貨行使罪は、未遂も処罰されます(刑法151条)。

通貨を偽造した上で、自分で使用した場合には、通貨偽造罪と偽造通貨行使罪が成立し、両罪は牽連犯(刑法54条1項後段)となります。

また、偽造通貨を使用して、商品を購入した場合に、偽造通貨行使罪とは別に詐欺罪が成立するかについて、学説上の争いがあります。
この点、詐欺罪は成立せず、偽造通貨行使罪だけが成立するというのが通説的見解です。

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