訴訟要件(民事裁判)

訴訟要件とは、民事裁判において、請求を認容するか、棄却するか等の判決をするための要件(前提条件)のことです。

訴訟要件は、民事裁判だけでなく、刑事裁判でも問題となりますが、ここでは民事裁判における訴訟要件について説明します。

訴訟要件は、請求が認容されるかどうかの判断を裁判所にしてもらうための前段階で必要となるものです。
訴訟要件がない場合には、門前払いになります。つまり、裁判所は、訴えを却下する判決をします。その場合には、いくら請求内容が認められるべきものであろうと関係ありません。それ以前の問題で却下されてしまうのです。

また、既に訴訟法律関係が発生していることを前提とするため、訴訟成立のための要件ではないと言われます。
さらに、訴訟要件は、口頭弁論終結時において具備される必要があると言われ、裁判の最初の時点で必ずしも要件を満たしてなければならないわけではありません。つまり、訴訟要件がない状態でも、原則として審理を行うことはできます。ただし、管轄については、訴え提起の時点で必要とされます(民事訴訟法15条)
通説は、事実審の口頭弁論終結時に具備している必要があるとします。有力説は、上告審の口頭弁論終結時とします。
それから、当初、訴訟要件を満たさない場合であっても、裁判所(裁判長)は、訴状の補正命令(民事訴訟法137条)・移送(民事訴訟法16条1項)によって、訴訟要件を具備させることができると言われます。

訴訟要件の種類としては、①裁判所に関するもの、②当事者に関するもの、③訴訟物に関するものに分類されるのが一般的です。
①裁判所に関するものとしては、ⅰ当事者と請求が日本の裁判権に服すること、ⅱ裁判所が管轄権をもつことがあります。
②当事者に関するものとしては、ⅰ当事者が実在すること、ⅱ当事者が当事者能力をもつこと、ⅲ当事者が訴訟能力をもつこと(訴訟能力がない場合、法定代理人によって代理されていること)、ⅳ当事者が当事者適格をもつこと、ⅴ訴訟代理人が就いている場合、代理権を有すること、ⅵ訴状が法律上の要件を満たすこと、ⅶ訴状が被告に有効に送達されていること等です。
③訴訟物に関するものとしては、ⅰ二重起訴の禁止に抵触していないこと、ⅱ訴えの利益があること、ⅲ同一の事件について既判力のある別の判決が既に存在していないこと、ⅳ再訴の禁止(民事訴訟法262条2項等)、別訴の禁止(人事訴訟法25条)に抵触しないこと等です。

訴訟要件の有無の調査については、裁判所が職権で調査するものとされています。当事者が訴訟要件について何も主張していなくても、裁判所が訴訟要件を問題にすることができるということです。これを職権調査事項と言います。
ただし、当事者である被告からの申立がないと取り上げられない訴訟要件が一部あります。それは、仲裁契約の存在(仲裁法14条1項)や訴訟費用の担保の不提供(民事訴訟法75条)のように被告の利益の保護を目的とする訴訟要件です。学説では、この訴訟要件を訴訟障害事由と呼んで、訴訟要件と区別するものもあります。

また、訴訟要件の有無を判断するにあたっての資料について、職権でなされるもの(職権探知主義)と、当事者の責任で行うもの(弁論主義)とがあるというのが通説的見解です。公益性の強い訴訟要件は職権探知主義が妥当し、そうでないものは弁論主義が妥当するとされます。
職権探知主義が妥当するとされるのは、裁判権、専属管轄、当事者の実在、当事者能力、訴訟能力等です。
弁論主義が妥当するとされるのは、任意管轄、訴えの利益、当事者適格等です。
この点については、学説上争いがあります。

訴訟要件の存否より先に原告の請求に理由がなく請求棄却になることが明らかになった場合、請求棄却判決をすることができるかどうか争いがあります。
通説は、請求棄却判決は許されず、訴えの適法性の判断をしないと判決をすることはできないとします。
有力説は、被告の利益保護を主たる目的とする訴訟要件(仲裁契約の抗弁、任意管轄等)、無益な訴訟の排除を目的とする訴訟要件(訴えの利益等)については、それらについて判断することなく請求棄却判決をなすことが許されるとします。
古い判例において、訴えの利益の問題があった場合にもかかわらず、原告が請求する債権の不存在が明白だとして、請求棄却の判決がなされたものがあります(大審院判決昭和10年12月17日)。

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