移送(民事裁判)

移送とは

移送とは、裁判が裁判所に係属した場合に、その裁判所の裁判により他の裁判所の担当に移すことです。

移送については、民事裁判だけでなく、刑事裁判などでも問題になりますが、ここでは民事裁判における移送について記載します。
移送は、裁判所による決定で行います(民事訴訟規則8条)。

特に、当事者同士が遠方の場合に、どちらの裁判所で裁判を行うかは、当事者にとって重要です。
基本的には、裁判を起こす側が、自分にとって都合が良い裁判所に裁判を起こすのが通常ですが、そこから他の裁判所に移されるのが移送です。

移送には、以下のとおり、いくつかの種類があります。

管轄違いに基づく移送

管轄違い、つまり訴えを提起した裁判所には当該事件の管轄がない場合に、管轄のある別の裁判所に移送することです。

管轄は、一般的に訴訟要件とされていることからすれば、管轄違いの場合には訴訟要件の不備を理由に訴えを却下することになりそうですが、訴えが却下されてしまうと、原告は再び訴えを起こす費用と手間がかかり、また一旦訴えを起こしたことによる時効中断の効果(民法147条1項1号、149条)や訴えの期間制限(会社法828条など)の期間遵守の利益を原告が失うという原告に酷な結果になることが考えられます。そこで、管轄違いの場合は、訴えを却下するのではなく、管轄のある裁判所に移送される旨が規定されました(民事訴訟法16条)。

管轄違いに基づく移送は、事物管轄(地方裁判所か簡易裁判所かに関する問題)、土地管轄(所在地の異なる同種の裁判所のどこに管轄があるかの問題)に関して、管轄違いがある場合に行われます。
ただし、地方裁判所は、訴訟がその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する場合に、訴訟の全部または一部について自ら審理・裁判をすることができる場合があると規定されています(民事訴訟法16条2項)。

著しい遅滞を避けるため・当事者間の衡平を図るための移送

民事訴訟法17条は、数個の管轄裁判所がある場合に、その裁判所で審理したときには訴訟の進行が著しく遅れる場合は、訴訟の全部または一部を他の管轄裁判所に移送することができる旨規定しています。

また、同条では、当事者間の衡平を図るために必要と判断した場合にも、他の管轄裁判所への移送を行うことができる旨規定されています。

その際に考慮される事情として、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地などが挙げられています。
専属管轄(専属的合意管轄は除きます)の場合には、著しい遅滞を避けるため・当事者間の衡平を図るための移送をすることはできません(民事訴訟法20条1項)。

簡易裁判所から地方裁判所への裁量移送

簡易裁判所は、その裁判所に管轄がある場合においても、訴訟の全部または一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送することができます(民事訴訟法18条)。
争いになっている訴訟物の価額は低くても、争点の内容が複雑である場合に、地方裁判所に移送されることはよくあります。 

専属管轄(専属的合意管轄は除きます)の場合には、簡易裁判所から地方裁判所への裁量移送をすることはできません(民事訴訟法20条1項)。

必要的移送

第一審裁判所は、管轄がある訴訟についても、当事者の申立て及びその相手方の同意がある場合には、原則として訴訟の全部または一部を申立てにある地方裁判所または簡易裁判所に移送しなければならないことになっており(民事訴訟法19条1項)、これを必要的移送といいます。

また、簡易裁判所は、その管轄に属する不動産に関する訴訟について被告の申立てがある場合には、原則として、訴訟の全部又は一部をその所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければなりません(民事訴訟法19条2項)。

専属管轄(専属的合意管轄は除きます)の場合には、必要的移送をすることはできません(民事訴訟法20条1項)。

即時抗告について

移送の決定または移送の申立を却下した決定に対しては、即時抗告をすることができます(民事訴訟法21条)。

移送の決定が確定すると、移送を受けた裁判所はその決定に拘束され、元の裁判所に返送することはできず(民事訴訟法22条1項)、さらに他の裁判所に移送することはできません(民事訴訟法22条2項)。そして、訴訟は最初から移送を受けた裁判所に提起されたものとみなされます(民事訴訟法22条3項)。

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