立証責任の分配

立証責任の分配とは、具体的事実について、どちらの当事者立証責任(証明責任、挙証責任)を負うかという問題のことです。

刑事裁判でも一応問題になりますが、「疑わしきは被告人の利益に」の原則により専ら立証責任は検察官が負うため、まず問題になりません。
以下、民事裁判における立証責任の分配について記載します。

法律上、立証責任をどちらが負うかについて一般的な規定はありません。
例えば、民法117条1項では、「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。」と規定され、証明責任の所在が明示されています。
このような場合には、その規定に従うことになりますが、そのような規定は非常に少ないです。
そこで、立証責任の分配の一般的基準が問題になります。

この点、法律要件分類説が、学説上の通説であり、同時に実務でも用いられていると言われています。
同説は、原則として、民法などの実体法規に定められている要件を基準とし、各当事者は自己にとって有利な法律効果の発生を定める法規の要件事実について立証責任を負うものとします。
簡単に言えば、その事実が認められることで有利な法律上の効果が発生することになる者がその事実の立証責任を負うということです。
具体的には、以下のように考えられています。
①権利根拠規定(権利の発生を定める規定)の要件事実
 その権利を主張する者が証明責任を負います(例:売買契約の成立(民法555条))。
②権利消滅規定(いったん発生した権利関係の消滅を定める規定)の要件事実
 権利を否認する者に証明責任があります(例:債務の弁済(民法474条)、契約の取消(民法4条1項、96条))
③権利障害規定(権利根拠規定等に基づく法律効果の発生を当初から抑止する要件を定める規定)の要件事実
 その法律効果の発生を争う者に証明責任があります(例:虚偽表示(民法94条)、錯誤(同95条))。
④権利阻止規定(権利根拠規定に基づいて発生した権利行使を阻止する要件を定める規定)の要件事実
 その権利を阻止しようとする者に証明責任があります(例:留置権(民法295条)、同時履行の抗弁権(同533条))

なお、現在の実務・通説は、条文の文言及び形式のみに依拠するのではなく、立法趣旨や当事者間の公平等を考慮した実質的思考により公平な分配を行っており、上記考え方を実質的に一部修正しています。
例えば、債務不履行責任における履行不能の帰責事由について、債務者が不可抗力であることの証明責任を負うものとされています。
つまり、民法415条、513条の文言からは、債権者が帰責事由の証明責任を負うものと解するのが自然ですが、債務者が一定の給付を義務づけられていること、帰責事由の証明は比較的困難であることから、債務者が自己に帰責事由がないことについて立証責任を負うものとされています。
また、準消費貸借契約における旧債務の存在について、債務者が旧債務の不存在につき証明責任を負っているという判例があります。
この点、民法588条の文言からは、債権者が旧債務の立証責任を負うようにみえますが、旧証書は破棄されることが多く、旧債務の立証は困難であること、準消費貸借契約を結ぶ場合には旧債務が存在していた蓋然性が高いこと等から、上記のように解されています。

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