身代金目的略取罪、身代金目的誘拐罪

身代金目的略取罪とは、近親者その他略取された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を略取する犯罪です。

身代金目的誘拐罪とは、近親者その他誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的で、人を誘拐する犯罪です。

身代金目的略取罪、身代金目的誘拐罪は、刑法225条の2に規定されています。
身代金目的略取罪、身代金目的誘拐罪の刑事罰は、無期または3年以上の懲役です。

身代金目的略取罪、身代金目的誘拐罪は、昭和39年の刑法一部改正で追加されました。
本罪が追加されるまでは、身代金目的の誘拐等は、営利目的誘拐罪、営利目的略取罪で処罰されていました。
さらに、身代金の要求は、恐喝罪で処罰されていました。

最近は、身代金目的の誘拐事件をあまり見聞きしなくなりましたが、当時は社会問題化していました。
有名なものとして、昭和35年に発生した「雅樹ちゃん事件」、昭和38年に発生した「吉展ちゃん事件」、「狭山事件」があります。いずれの事件もテレビや新聞で大きく報道されていました。
また、誘拐された被害者が殺害される場合が多くありました。上記の事件はいずれも被害者が殺害されました。
このように身代金目的の誘拐は、その危険性、残酷性が極めて高いことから、営利目的誘拐罪、営利目的略取罪より重い刑罰を科す必要が考慮され、本罪が新設されたと言われています。
本罪は、営利目的誘拐罪、営利目的略取罪の加重類型とされています。

本罪の成立要件として、犯人が身代金目的、つまり近親者その他略取・誘拐された者の安否を憂慮する者の憂慮に乗じてその財物を交付させる目的を有した上で、誘拐等することが必要です。
これに関し、安否を憂慮する者とは、どのような範囲の者を指すかについて、以下のような学説上の争いがあります。
もちろん、親子、夫婦、兄弟のような者は、近親者として該当します。それ以外の者がどの程度含まれるかが問題となります。
①親族にかぎらず知人その他であっても安否を憂慮する者を全て含む説。
②事実上の保護関係が存在するような場合に限る説。
③近しい親族関係その他これに準ずる関係があり、親身になって心配する立場にある者とする説。
このうち③説が、最高裁判例の見解です。
最高裁決定昭和62年3月24日は、③説を採用し、銀行の社長が誘拐され、会社の幹部に身代金の要求があった事例で、本罪の成立を認めました。
なお、大坂地裁判決昭和51年10月25日は、パチンコ店代表取締役が誘拐され、その専務取締役に身代金の要求があった事例で、本罪の成立を否定していました。
他方、東京地裁判決平成4年6月19日は、富士銀行の従業員(当時37歳)が誘拐され、同銀行の頭取に身代金の要求があった事例で、本罪の成立が肯定されています。

また、財物を交付させる目的が必要なところ、財物ではなく財産上の利益を得る目的の場合には、本罪は成立しないとされています。
したがって、借金の債務を免除してもらう目的では、本罪は成立せず、営利目的誘拐罪、営利目的略取罪が成立することになります。
これに関し、預金口座へ振込送金させる場合も、財物を交付させる目的に含まれるかどうかについて学説上争いがあります。

略取は、暴行・脅迫を手段として、人を生活環境から不法に離脱させて、自己・第三者の事実的・実力的支配化におくことです。
誘拐は、欺罔・誘惑を手段とする場合のことです。

本罪は、犯人が公訴の提起前に被害者を安全な場所に解放したときは、その刑が減軽される旨の規定があります(刑法228条の2)。
これは、犯人が犯罪から後退する道を与え、被害者の安全な解放をはかろうとする政策的なものです。

本罪は、未遂も処罰されます(刑法228条)。

略取罪、誘拐罪は、親告罪のものが多いですが、本罪は親告罪ではありません。
したがって、被害者等による告訴は必要ありません。

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