遺棄罪(単純遺棄罪)

遺棄罪(単純遺棄罪)とは、老年・幼年・身体障害・疾病のために扶助を必要とする者を遺棄する犯罪です。
遺棄罪については、刑法217条に規定があります。
遺棄罪の刑事罰は、3月以上5年以下の懲役です。

遺棄罪としてイメージされるのは、老人を姥捨て山に運んで置き去りにする行為です。
ですが、現代においては、そのような事例はまずありません。

遺棄罪は、生命・身体に対する危険から保護するためにあるというのが現在の通説的見解です。

また、よくあるのは、乳幼児を家などの密室に置き去りにしてしまう行為ですが、それらは親やその交際相手によって行われることが多く、そのような乳幼児を保護する責任を負う者によって遺棄が行われた場合は、保護責任者遺棄罪(218条)が成立します。
したがって、遺棄罪は、あまり見かけない犯罪だと思われます。

遺棄罪の対象となる客体は、老年・幼年・身体障害・疾病のために扶助を必要とする者に限定されています。
したがって、手足を縛られて動けないでいる者や、海で溺れかけている者については、それらの者を見捨てたとしても、遺棄罪の対象にはならないものと思います。
老年や幼年については、何歳であれば該当するかという点は曖昧です。
東京地裁判決昭和63年10月26日は、14歳の少年についても、幼年に該当することを認めていますが、そこまで広がることについて批判もあります。
身体障害とは、身体器官に障害があり不完全なことです。
疾病については、広く身体上・精神上の疾患のあることだとされています。
泥酔している場合も疾病に該当するというのが最高裁の見解です(最高裁決定昭和43年11月7日)。
また、交通事故で重傷を負った者や、覚せい剤によって錯乱状態にある者のように、いわゆる病気とは異なる場合でも、遺棄罪の対象になることを認めている裁判例があります。

遺棄については、学説上、かなり細かな議論があります。
この点、伝統的な学説は、遺棄とは、赤ん坊を公園のトイレに運んで置き去りにするような行為者と客体との場所的離隔を伴う行為と考えます。
なお、赤ん坊と同居しているものの、赤ん坊に食事を与えず飢餓状態にすることは、保護責任者遺棄罪の刑法218条において、「生存に必要な保護をしなかった」という不保護に該当するものとします。
さらに、遺棄のなかに、①自宅から公園のトイレへ運ぶ積極的な行為のある場合(これを移置といいます。)と、②既にいる危険な場所から自分だけが立ち去り赤ん坊を放置する場合(これを置き去りといいます。)とに分けます。
また、①は作為的であるのに対し、②は不作為(すべき行為をしないこと)とし、そのような観点から区別します。
その上で、遺棄罪の遺棄は、①の移置だけが該当するものと考えます。
保護責任者遺棄罪の遺棄については、①移置だけでなく、②置き去りも含むものとします。それは、保護責任者遺棄罪は、保護義務を負う者にだけ成立するので、②置き去りという不作為も含めるのが適切とするのです。
最高裁判例も、この伝統的な学説と同様の解釈をしていると考えられています。

これに対し、同じ「遺棄」という言葉で、異なる解釈が両立するのはおかしい、移置・置き去りという行為の分類と作為・不作為というのは必ずしも合致しないという批判が最近は強くなりつつあります。
例えば、危険な場所に向かう乳幼児を放置する行為は、不作為だが、移置に該当するということが言われます。

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