同意堕胎致死傷罪

同意堕胎致死傷罪とは、妊娠中の女子の嘱託を受け、またはその承諾を得て、堕胎させ、よって女子を死亡または傷害を負わせた者に成立する犯罪です。
同意堕胎致死傷罪は、刑法213条後段に規定されています。
同意堕胎致死傷罪の刑事罰は、3月以上5年以下の懲役です。

同意堕胎致死傷罪は、要するに、同意堕胎罪を犯した上で女子を死亡または傷害を負わせる犯罪ということになります。
本罪は、結果的加重犯といわれます。
結果的加重犯とは、基本的な犯罪を犯し、行為者の予測していなかった重い結果が生じた場合に、基本的な犯罪よりも加重された刑罰が科される犯罪のことです。
したがって、同意堕胎罪を犯した者が、女子を死亡させることや傷害を負わせることについて認識(予測)していないことが本罪成立のために必要です。
もし、同意堕胎罪を犯した者が、女子を死亡させることや傷害を負わせることを認識・認容していた場合は、殺人罪または傷害罪がさらに成立することになり、同意堕胎致死傷罪は成立しません。

本罪の要件のうち、基本的な犯罪である同意堕胎罪に関する部分については、同意堕胎罪と同様ですので、同意堕胎罪の箇所を参照していただけたらと思います。

重い結果について、死亡とは、刑法上、三徴候説というが一般的にとられており、三徴候説は①自発呼吸の停止・②脈(心拍)の停止・③瞳孔反射機能の停止という3点から心臓の死を判定し、これを人の死とする見解です。

傷害とは、人の生理機能の障害とされています。
基本的には、怪我を負わせることが傷害です。
ただし、それだけではなく、判例上、病気を感染させること、キスマークをつけることも、傷害として認められています。
この点、堕胎の場合、どうしても一定程度母体に対して傷を負わせることが想定されます。
したがって、堕胎行為に伴って通常発生する程度の傷が発生した場合については、本罪の傷害にはならず、同意堕胎罪の範囲で処罰されるものと思われます。

堕胎そのものは失敗して未遂にとどまったものの、母体について死亡または傷害の結果が発生した場合に、同意堕胎致死傷罪が成立するかについて、学説上の争いがあります。
この点、堕胎そのものが未遂の場合は、本罪は成立しないとする有力説があります。
この有力説は、同意堕胎罪について未遂犯が処罰されないことから、堕胎が未遂の場合は、本罪も成立すべきでないとします。
この説だと、堕胎が未遂で、母体に死亡または傷害の結果が発生した場合は、過失致死罪または過失傷害罪だけが成立することになります。
これに対し、大審院判決大正13年4月28日は、堕胎が未遂の場合でも、同意堕胎致死傷罪の成立を認めます。
本罪の成立を認める説は、堕胎行為は、母体の生命・身体に対して危険のあるものであり、堕胎が失敗しても、本罪の成立を認めるべきとします。

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