準強制わいせつ罪

準強制わいせつ罪とは、人の心神喪失・抗拒不能に乗じ、または心神喪失・抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者に成立する犯罪です。

準強制わいせつ罪の規定は、刑法178条1項にあります。
準強制わいせつ罪の刑事罰については、条文上、176条の例によると規定されています。
つまり、刑法176条の強制わいせつ罪と同じ刑罰である、6月以上10年以下の懲役が科されます。

心神喪失とは、精神障害や意識障害などにより、自己に対してわいせつな行為が行われることについて正常な判断ができない状態のことをいうと思われます。
精神障害による心神喪失と認められた裁判例として、6~7歳程度の知能しか有しない25歳の女性の事案があります(東京高裁判決昭和58年6月8日。ただし、この裁判例は準強姦罪の事案です)。
意識障害については、睡眠状態にある者や泥酔状態にある者を含みます。
心神喪失という概念については、刑法39条1項において、「心神喪失者の行為は、罰しない。」と規定されている、いわゆる責任能力でも問題となります。
しかし、責任能力で問題となる心神喪失と、準強制わいせつ罪における心神喪失は、内容が異なると考えられています。
つまり、責任能力で心神喪失と認められる状態の者でも、自己に対してわいせつな行為が行われることについて判断できる場合が考えられ、その場合には準強制わいせつ罪は成立しないとされています。
ただし、そのような場合は例外的だと思われます。
逆に、泥酔状態でわいせつ行為を受け、準強制わいせつ罪の被害者になる場合は比較的認められやすいのに対し、同じような泥酔状態の者が必ずしも責任能力無しと認められるわけではないと思います。

抗拒不能とは、心神喪失以外の理由で、物理的・心理的に抵抗できない・抵抗するのが著しく困難な状態をいうと考えられています。
物理的な抗拒不能は、例えば、手足をしばられている状態です。
心理的な抗拒不能は、例えば、催眠術を使った場合が該当すると言われます。

実行行為としては、既に心神喪失・抗拒不能の状態にあるのを利用した場合と、自らの行為で心神喪失・抗拒不能の状態を作り出した場合のいずれでも構いません。

わいせつな行為とは、被害者の性的羞恥心の対象となるような行為のことであり、キスをすることもわいせつな行為に該当します。
詳しくは、強制わいせつ罪の箇所をご覧いただけたらと思います。
それから、判例は、自己の性欲を刺激・興奮させ、満足を得るという性的な意図を行為者が有していることが必要と考えています。

準強制わいせつ罪は、未遂犯でも処罰されます(刑法179条)。

以前、準強制わいせつ罪は、未遂犯も含め、被害者等の告訴がなければ検察官は起訴することができない親告罪と規定されていました。
平成29年刑法一部改正により、準強制わいせつ罪は、親告罪ではなくなりました。
強制わいせつ罪などの性犯罪が親告罪とされていたものが、非親告罪とされました。
したがって、被害者が告訴しなくても、検察官は起訴でき、処罰され得ることになっています。

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