有価証券虚偽記入罪

有価証券虚偽記入罪とは、行使の目的で、有価証券に虚偽の記入をした者に成立する犯罪のことです。

有価証券虚偽記入罪は、刑法162条2項において規定されています。
有価証券虚偽記入罪の刑事罰は、有価証券偽造罪、有価証券変造罪と同様とされており、3月以上10年以下の懲役になります。

本罪の対象(客体)は、有価証券です。
有価証券とは、財産権を表示した証券で、その表示された権利の行使・処分のために証券の占有が必要なもののことです。
有価証券の例としては、約束手形、小切手や株券、商品券などがあります。

この有価証券に虚偽の記入をするのが本罪の実行行為です。
虚偽の記入については、判例と学説で見解が分かれています。

学説は、虚偽の記入とは、いわゆる無形偽造のことであり、作成権限のある者が虚偽の記載をすることだと考えます。
そして、手形の振出のような基本的証券行為であろうと、手形の裏書のような付随的証券行為であろうと関係なく、作成権限のある者の場合に虚偽の記入とし、作成権限がない者の場合に偽造・変造になると解します。

判例は、手形の振出のような基本的証券行為を除いた付随的証券行為(裏書や引受など)について真実に反する記載をすることであるとします(最高裁決定昭和32年1月17日)。
判例の見解によれば、基本的証券行為である手形の振出について虚偽の記入がなされた場合は、有価証券偽造罪となります。
そして、裏書などの付随的証券行為について虚偽の記入がなされたときに、本罪が成立すると考えます。

このような学説と判例の対立については、有価証券偽造罪であろうと、有価証券虚偽記入罪であろうと、法定刑は全く同じであることから、この区別を厳密に論じる実益に乏しいという指摘もあります。

また、行使の目的をもって、虚偽の記入という実行行為が行われたことが必要です。
行使の目的とは、真正な有価証券として使用する目的のことです。
ただ、流通に置くことまでは必要ないと考えられています。
つまり、見せ手形にすることを目的としている場合でも、行使の目的があるものと認められます。

行使の目的をもって他人名義の手形を偽造した上、行使の目的で他人名義で勝手に裏書をした場合には、これらの行為は包括的に、有価証券偽造罪の一罪を構成するという判例(最高裁決定昭和38年5月30日)があります。

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