非現住建造物等放火罪

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非現住建造物等放火罪とは、放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物等を焼損する犯罪です。

刑法109条に規定されており、目的物の建造物等が他人所有の場合が109条1項の他人所有非現住建造物等放火罪で、自己所有の場合が109条2項の自己所有非現住建造物等放火罪になります。
刑罰は、他人所有の場合が2年以上の有期懲役で、自己所有の場合が6月以上7年以下の懲役です。罰金刑等はありません。

非現住建造物等放火罪の実行行為である放火については、現住建造物等放火罪において説明している内容と同じです。

非現住建造物等放火罪の対象である、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物・艦船・鉱坑とは、現住建造物等放火罪が成立しない建造物・艦船・鉱坑ということになります。
完全な空き家は、本罪の対象です。また、人が宿泊することがないオフィスビルで、かつ放火当時人がいないときには、本罪の対象になります。日中で人がいるオフィスビルは、現住建造物等放火罪の対象になります。
また、建造物とは、家屋その他これに類似する建造物のことですが、裁判例で、物置小屋は建造物とされ、豚小屋は建造物に該当しないとされています。
一般に、建造物については、人が出入りすることが予定されていることが必要とされています。
艦船・鉱坑については、現住建造物等放火罪で説明しているとおりです。
ただし、現住建造物等放火罪では対象とされていた、汽車・電車が、非現住建造物等放火罪の対象になっていません。
非現住の汽車・電車は、刑法110条の建造物等以外放火罪の対象となります。

建造物等が他人所有自己所有かで区別されているのは、他人の所有権への侵害がある方が刑罰が重くなっているということです。
現住建造物等放火罪の場合には、他人所有でも自己所有でも区別されていません。
ただし、現に人が住居に使用しているが、放火犯人の所有物で、住居の中に人がいない場合(放火犯人だけいる場合も)には、現住建造物等放火罪は成立せず、自己所有建造物等放火罪が成立し得ることになります。
また、自己所有であっても、差押えを受けている場合、物権を負担している場合、賃貸している場合、保険に付した場合には、他人所有と扱われます(刑法115条)。
加えて、他人所有の建造物であっても、その所有者が火を点けられることに同意している場合には、自己所有と扱われます。

自己所有か、他人所有かで異なる点は、刑罰の軽重だけではありません。
もう一点、自己所有の場合は、公共の危険の発生という要件を満たすことが必要になります。このような犯罪を具体的危険犯と言います。
そのことは、刑法109条2項で、「ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない」と規定されていることから認められます。
これに対し、公共の危険の発生が不要である他人所有建造物等放火罪は、抽象的危険犯とされます。
公共の危険については、最高裁決定平成15年4月4日において、現住建造物等(刑法108条の対象物)、他人所有非現住建造物等(刑法109条1項の対象物)への延焼の危険だけでなく、不特定多数の人の生命・身体や前記建造物等以外の財産への危険を含むと判示されています。ただ、これは、建造物等以外放火罪に関する事例での判断ではあります。
公共の危険の発生が認められない場合としては、例えば、周囲に引火するような物が何もない河川敷にぽつんと建っていた自己所有の物置小屋を放火した場合です。

それから、自己所有建造物等放火罪において、放火犯が、公共の危険が発生することを認識していたことが要件として必要かどうかが争点となっています。 
判例は、公共の危険発生の認識は不要としています。

また、本罪で未遂犯が処罰されるのは、他人所有の場合だけで、自己所有の場合は未遂犯が処罰されません(刑法112条)。

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