多衆不解散罪

多衆不解散罪とは、暴行・脅迫をするため多衆が集合した場合に、権限のある公務員から解散の命令を3回以上受けたにもかかわらず、なお解散しないことにより成立する犯罪です。

刑法107条に規定されています。
多衆不解散罪の刑事罰は、その参加者の役割によって、以下のとおり異なります。
①首謀者は、3年以下の懲役が科されます。
②その他の者は、10万円以下の罰金が科されます。

この多衆不解散罪は、騒乱罪の予備段階(実行に着手する前の準備段階)を処罰するものと解されています。
そこで、騒乱罪が成立するに至った場合には、仮に多衆不解散罪が既に成立していたとしても、多衆不解散罪が騒乱罪に吸収されることになり、騒乱罪一罪だけになります。

多衆不解散罪における「暴行・脅迫をするため」の暴行・脅迫の内容については、騒乱罪の暴行・脅迫と同一の内容と思料されます。
したがって、暴行とは、暴行罪が成立する程度の、直接人に対する有形力の行使である必要はなく、物に対する有形力の行使も含む最広義のものです。
脅迫とは、脅迫罪の脅迫と異なり、告知される害悪の内容を問わないものです。
このような暴行・脅迫を行う共同意思が必要と解されています。

多衆が集合したという点についても、騒乱罪と同一と思料されます。
つまり、騒乱罪が成立する程の大人数が集まる必要があります。

多衆不解散罪は、「解散しなかった」ことが問題となります。
しないことが犯罪の実行行為であることが明確に規定されており、不真正不作為犯と言われます。通常は「すること」が犯罪であり、これを作為犯と言います。
解散とは、集団から任意に離脱することとされます。
一部は解散し、一部は解散しなかった場合、解散しなかった者が多衆不解散罪に該当しますが、解散しなかった者だけでは少人数で騒乱罪が成立しない状態になった場合には、多衆不解散罪が一切成立しないことになります。
また、集団がただ場所を移動させただけの場合には、解散したことになりません。

権限のある公務員から解散の命令がされたことが必要ですが、具体的に何がそのような解散の命令に該当するかについては、学説上疑問が呈されています。
戦前は、旧治安警察法8条1項に解散命令権が規定されていましたが、日本国憲法上問題があることから、廃止されています。
現行法該当し得るものとして、警察官職務執行法5条において、犯罪がまさに行われようとするのを認めたときは一定の要件の下に制止させることができると規定されているものがあると言われていますが、解散の命令とは異なるのではないかとの指摘があります。
一応、この警察官職務執行法の「制止」のこととされていますので、権限のある公務員とは、警察官のことになります。

解散命令が「3回以上」必要とされていますが、その意味についても、学説上争いがあります。
一つの説は、3回目の解散命令がなされた時点で、多衆不解散罪が成立するとします。
もう一つの説は、3回目が出た時点で犯罪成立することになると、3回目の解散命令は単なる犯罪成立の宣言となってしまい、実質的に2回の解散命令に従わないことでの犯罪成立になるのは妥当でないとし、犯罪成立を3回目の解散命令が出た以降に遅らせることを認めます。
このことが問題になった裁判例は見当たりません。
また、3回の解散命令についても、3回連呼すれば足りるわけではなく、多少の時間的間隔が必要と言われています。

首謀者については、解散しないことについて主導的な役割を果たした者のことであり、騒乱行為の首謀者が必ずしも多衆不解散罪の首謀者になるわけではないと解されています。
騒乱罪と異なり、首謀者以外の者は、まとめて規定されています。

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