封印破棄罪

封印破棄罪とは、公務員による封印または差押えの表示を損壊するなどにより公務員の命令・処分を無効にする犯罪です。

刑法96条に規定されています。
封印破棄罪の刑罰は、同条により、3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金またはこれが併科されます。

封印とは、物の任意の処分を禁止するために、公務員が開くことを禁止する旨を表示した封緘(ふうかん)等の物的標示のことです。
例えば、裁判例で封印として認められたものとして、密造酒を販売禁止にして密造酒の入った桶に封印をしたものがあります。
他にも、裁判所の執行官が差押のために積み上げた俵に縄張りをして、その縄に取り付けた差押え物件であることや執行官の氏名などを記載した紙片が、封印と認められました。

差押えの表示とは、公務員がその職務上保全すべき物を自己の占有下に置く処分をするにあたって、その占有下に置いたことを表示したものです。
例えば、土地を執行官が占有保管する旨の公示札は、差押えの表示に該当します。

これら封印や差押えの表示が適法である必要があるかについては、学説の多数は、適法・有効な封印・差押えの表示であることを必要とします。
この点、最高裁判決において、執行官が、仮処分決定に基づく執行の際、仮処分の債務者ではなく第三者が占有している家屋について、仮処分の債務者が占有しているものと誤信して、仮処分の執行として家屋の占有を執行官に移す旨の公示を誤ってしたところ、家屋を占有している第三者が法律上の救済手続をとらずに実力行使した場合について、封印破棄罪の成立を肯定しています(最高裁判決昭和42年12月19日)。
その理由として、執行官が故意にその第三者の権利を侵害しようとした目的があったことは認められず、その執行の瑕疵が重大かつ明白であって、執行行為そのものが無効または不存在と認められるほどではなかったことが判示されています。

また、刑法96条の損壊とは、物理的に毀損・破壊・除去し、事実上の効力を失わせることです。
封印を破いたり、差押えの表示を移動させたりすることが、損壊に該当します。
同条の「その他の方法」により命令・処分を無効にしたとは、損壊以外の方法で、封印・差押えの表示の命令・処分の事実上の効力を失わせることです。「無効にした」といっても、法的に無効にする行為である必要はありません。
例えば、立入禁止の表示札を無視して立ち入る行為や、差押物を持ち出したり、売却したりする行為、仮処分による処分の禁止の表示札があるにもかかわらず建造物を改装する行為がこれに該当します。

それから、いわゆる故意の問題として、 適法・有効な封印・差押の表示であるにもかかわらず、違法・無効な封印・差押えの表示であると誤信した場合に、封印破棄罪が成立するかどうかについても、論争があります。
これに関する最高裁昭和32年10月3日判決は、国税徴収法に基づく滞納処分による差押えについて、差押調書に重要な事項の記載漏れがあるから、差押えが違法で無効と誤信して差押えの表示を損壊した事案において、法律上有効な差押えの表示を被告人が無効であると誤信したとしても、それは法律上の錯誤であり、故意を阻却せず、封印破棄罪が成立し、有罪であると判示しました。

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