公務執行妨害罪

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公務執行妨害罪とは、職務を執行している公務員に対して暴行・脅迫を加える犯罪です。
刑法95条1項に規定されています。
公務執行妨害罪の刑罰は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金です。

公務執行妨害罪は、公務員に対して暴行・脅迫を加えるものであるところ、刑法7条で、刑法における「公務員」とは、国または地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいうものと規定されています。

また、本罪は、公務員が職務を執行するにあたり、これに対して暴行・脅迫を加えることが問題になるところ、「職務」とは、具体的に何を指すのかについて学説上争いがあります。
大きく分けると、①職務には、全ての公務を含む説と②職務に含まれるのは、全ての公務のうち権力的公務などに限る説があります。
②公務執行妨害罪の対象は権力的公務などに限る説の根拠としては、業務妨害罪(刑法233条、234条)の存在があります。つまり、業務妨害罪は、民間人・民間企業の業務に対する妨害に適用されるところ、民間の業務とほぼ同じ公務については公務執行妨害罪ではなく業務妨害罪の成立を認めるのが妥当と考えるのです。例えば、私立高校の教員に対しては業務妨害罪が成立することと同様、公立高校の教員(公務員)に対しても業務妨害罪が成立すると考えるのです。
この点、最高裁判例は、①全ての公務が公務執行妨害罪の「職務」に含まれる説を採用していると考えられています。

また、通説判例は、条文に明記されていませんが、職務執行の適法性が存在することを公務執行妨害罪成立の要件と考えます。
その根拠として、違法な公務員の行為はおよそ職務の執行とはいえないなどと言われます。
職務執行の適法性が認められるためには、一般的に、以下具体的の要件を必要とします。
①行為が当該公務員の一般的・抽象的職務権限に属すること。
②公務員がその職務を行う具体的権限を有すること。
③その職務執行の法律上の重要な要件・方式を履践していること。

加えて、この職務執行の適法性の判断基準について、学説上争いがあります。
①客観説…裁判所が法令に従いながら客観的に判断する説です(判例通説)。
②主観説…公務員が真実その職務の執行と信じてこれを行ったかどうかで判断する説です。
③折衷説…一般人の見解を基準として判断する説です。

さらに、職務執行の適法性の判断要素に行為後の事情を含めるかに関しても争いがあります。
①純客観説…行為後の事情を含める説です。結果的に客観的に正しい公務のみが保護に値すると主張します。
②行為時基準説…行為後の事情は含めない説です(判例通説)。行為後の事情まで含めると、最終的に無罪だった場合に公務を保護できないと主張します。

公務執行妨害罪の実行行為である暴行・脅迫については、暴行とは、公務員に対して直接または間接の不法な攻撃を加えることです。判例で間接の不法な攻撃に該当すると判断されたものとして、覚せい剤取締法違反の逮捕現場で押収された覚醒剤入りのガラス容器を足で踏みつけて壊す行為があります。公務執行妨害罪の暴行は、暴行罪の暴行より広い概念です。
脅迫とは、人を畏怖させる害悪の告知を広く含み、害悪の内容は限定されていません。脅迫罪の脅迫は、害悪の内容を「生命、身体、自由、名誉又は財産」に限定していますので、脅迫罪より公務執行妨害罪の方が広く成立することになります。
なお、公務執行妨害罪が成立する場合には、暴行罪や脅迫罪が別に成立するわけではありません。

公務執行妨害罪は、警察官に対して行われることがよくありますが、警察官に対する公務執行妨害罪については厳しい刑事処分になることが多いと言われています。

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