芸能人の芸名の商標登録と本名について

加護亜依さんの騒動について

今、元モーニング娘の加護亜依さんが新事務所で芸能活動を再開しようとしたところ、以前所属していた芸能事務所が「加護亜依」という商標を登録しているので、「加護亜依」という名前での芸能活動を認めないと主張している問題が報道されています。
あくまで報道されている内容しか分かりませんが、報道されている事実を前提に法的な問題を考えたいと思います。

商標と本名、芸名について

報道では、「加護亜依」というのは本名であるといわれています。マイク
商標法26条1項1号により「自己の氏名」を普通に用いる範囲で使い続けることができると規定されていますので、「加護亜依」が本名であれば別人に商標登録されていたとしても、使用し続けることができると思われます。

ただし、加護さんは、以前は離婚した母親の別の姓だったのを2011年に父親の姓である加護に変更したと報道されており、今回の事態に備えていた可能性があるといえます。姓(民法では氏といいます)は、法律上変更できる場合が制限されており、父親の姓に変更するためには、裁判所に変更の許可の申立をして認められる必要があります。加護さんはわざわざ裁判所にそのような申立をしたものと思われます。

この点、商標法26条2項において、商標権の設定の登録があつた後に不正競争の目的で自己の氏名を用いた場合は自己の氏名も使用できないと規定されています。加護さんが今回に備えてわざわざ姓を変更したのだとすると問題になり得ますが、姓の変更といっても父親の姓に変更したということですし、憲法で職業選択の自由が保障されていることからしても、今回のケースが不正競争の目的までは認められない可能性が高いと思われます。

また、「加護亜依」は「著名な芸名」(商標法26条1項1号)に該当すると思われますので、その点でも、普通に用いる範囲では問題にならないと思われますし、加護さんは商標法32条に規定されている先使用に該当する可能性が高いと思われますので、「加護亜依」の芸名を使用できる可能性が高いです。

結婚と姓について

また、加護さんは、平成23年12月に結婚したことを発表していますが、「加護亜依」が本名だとすれば、結婚相手の姓ではなく加護姓で入籍したのだと思われます。日本では、結婚の際、夫婦どちらかの姓に統一することになっています(民法750条)。
加護さんは、結婚の際も、今回の事態に備えて、加護姓で入籍したのかもしれません。 それでも、やはり本名の使用は認められる可能性が高いと思われます。

以前所属の芸能事務所の主張について

加護さんが以前所属していた芸能事務所は、「加護亜依」での芸能活動が行われた場合、法的措置をとるとか、道義的責任を追及するとか主張しているようです。
既に述べたとおり、この芸能事務所の主張は認められない可能性が高いように思われます。

ただし、芸能事務所と芸能人との間で契約書のなかで、芸能事務所の許可無しに芸名を使用することができない内容になっている場合やそのような場合に巨額の損害賠償義務が発生する内容になっている場合には、別途の考慮が必要になることが考えられます。

まとめ

以上は報道されている内容を前提にしたもので、弁護士が事実を確認した上でのものではありませんが、興味深い内容を含んでいるものでコラムに書いてみました。

今回の報道を耳にした際、芸能事務所が所属タレントの芸名を商標登録することによって所属タレントを独立や移籍をさせないことが可能であることについて、なにか腑に落ちない気持ちになったのは私だけではないと思います。
芸能人が売れた途端に独立できるというのでは、芸能事務所の経営が成り立たないのかもしれません。それでも、人の名前というのは本人にとってとても大切なものですので、名前を使用する権利を芸能事務所が商標として押さえて独立したら法的措置をとるというのは、仮に純粋な芸名であったとしても、状況によっては権利濫用として認められないという判断がなされることも例外的ではありますが起こり得るのではないかと思います。

なお、どのような商標が登録されているかを検索できるサイトがあり、こちらですので、興味のある方は色々検索してみてください。有名なアイドルグループ名は、やはり芸能事務所で商標登録されているようです。

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